第23回東京フィルメックスでお披露目された話題作。実際の事件をモチーフに、メディアの姿勢について問う

 監督であり、「東京リベンジャーズ」シリーズの脚本家としても知られる髙橋泉と、監督・俳優として活動する廣末哲万からなる映像ユニット「群青いろ」が制作し、第23回東京フィルメックスでお披露目された話題作『彼女は、なぜ猿を逃したか?』が、2月24日からポレポレ東中野で上映される。

 第23回東京フィルメックスは2022年開催だから、撮影はもう少し前になるのだろうか。すでにその時点で藤嶋花音を、魅力を十二分に生かす形でキャスティングしているところは慧眼そのもの。さらに「事件」を起こした彼女から話をききだすルポライターの優子役として「群青いろ」新恵みどり、その夫・奏太役に廣末と、ベテランが登場して脇を固めている。「どんでん返し」(一度ではないと感じた)がポイントの物語であると感じたが、一貫しているのは、「主流にはなれない人」への温かなまなざしだ。世の中、誰もが人付き合いが得なわけでも、社交に秀でているわけでもない。そこになじめない者だって、毎日必死に生きている。恣意的に大衆を誘導することができる「切り抜き報道」、誹謗中傷という名の「言葉の暴力」がもたらす、個人の精神へのダメージについても、強く深く考えさせられる一作だった。

映画『彼女は、なぜ猿を逃したか?』

ポレポレ東中野にて上映中

監督・脚本:髙橋泉
配給:カズモ
DCP5.1ch/98分/COLOR/2022年

▼作品について
https://filmex.jp/2022/program/made-in-japan/mj1

▼上映館について
https://pole2.co.jp/