従来のタイムループ映画と一線も二線も画す、突然変異にして唯一無二の異色作『ペナルティループ』

 私はタイムリープものが好きで、そのつど「タラレバの切なさ」に触れる思いになるのだが、この作品は趣向が異なる。自分の中にある「良心」が激しく揺さぶられているような感触を覚えた。

 タイトル通り、まさに「ペナルティ」が「ループ」する。主人公の岩森は6月6日の朝6時、溝口を殺すために家を出る。彼に恋人・唯を殺されたので、その復讐だ。そして岩森は無事、溝口を殺す。くたくたになった岩森は爆睡して、翌日を迎えるのだが、日付はなんと6月6日。殺したはずの溝口も生きていて、ということは、殺し直さなければならず……。

 殺す・殺さないというところに焦点を絞って見るのも一興であろうが、世の中、殺しを行うひとは圧倒的少数である。そこで私は、「何をいくら一所懸命やっても結果が反映されない男の話」と脳内翻訳した。こんなに気合を入れて、こんなに体力を使って取り組んだのに、それが他者にはまったく伝わらず、結果として何も変わっちゃいないというむずがゆさ。そう考えると私にとって岩森が決して他人とは思えなくなってくる。ジレンマと闘い、いかにそれを克服してゆくか。岩森の成長物語のように感じたのは私だけかもしれないが、いろんな解釈が成立する風通しのよさは確かにある。

 監督・脚本の荒木伸二は、「仇討ち」というテーマをこの映画に落とし込んだという。岩森役は若葉竜也、溝口役は伊勢谷友介、唯役は山下リオ、謎の男役はジン・デヨン。

映画『ペナルティループ』

3月22日(金) 新宿武蔵野館、池袋シネマ・ロサほか全国公開

<キャスト>
若葉竜也 伊勢谷友介 山下リオ ジン・デヨン 松浦祐也 うらじぬの 澁谷麻美 川村紗也 夙川アトム

<スタッフ>
脚本・監督:荒木伸二 製作総指揮:木下直哉 プロデューサー:武部由実子 アソシエイトプロデューサー:椎井友紀子 音楽:渡邊崇 音楽プロデューサー:緑川徹 撮影:渡邉寿岳 照明:水瀬貴寛 音響:黄永昌 美術:杉本亮 装飾:山川邦彦 スタイリスト:伊賀大介 ヘアメイク:大宅理絵 編集:早野亮 助監督:甲斐聖太郎 製作担当:松田憲一良 アシスタントプロデューサー:座喜味香苗 製作:木下グループ 制作・配給:キノフィルムズ
(C) 2023『ペナルティループ』FILM PARTNERS

公式サイト
https://penalty-loop.jp/