脂の乗り切ったレゲエ・レジェンドの姿。1980年、ジミー・クリフの真髄、『ボンゴマン ジミー・クリフ』

 『ボブ・マーリー ラスト・ライブ・イン・ジャマイカ』が好評上映中のところ、レゲエ・レジェンドであるジミー・クリフの絶頂期(といっていいであろう)の記録『ボンゴマン』がデジタル・リマスター化されて3月22日から新宿シネマカリテほかで全国順次ロードショーされる。

 私は10年ほど前に彼の来日公演に接したが、そのときのこちらの意識は「巨匠を拝む」という感じであり、なんというか、長年にわたって磨き抜かれた、完成の域にある芸を楽しませてもらった、という感じだった。が、この『ボンゴマン』が収録されたのは主に1980年。精悍な、ギラギラしたジミー・クリフの姿が生け捕りされているかのようだ。そして今回、衣装といい、歌う時のアクションといい、82年ごろの萩原健一はこの時期のジミーに触発されていたのかもしれない、とも思った。

 曲目は「ファンダメンタル・レゲエ」、「メニー・リヴァーズ・トゥ・クロス」、ボブ・マーリーの名曲「ノー・ウーマン、ノー・クライ」の実に心温まるカヴァー・ヴァージョンなど。90年代にソロ・シンガーとして成功したナディーン・サザーランドが歌う「イン・ザ・ゲットー」なども聴くことができる。ライヴ会場は故郷・ジャマイカのサマートンで行われたフリーステージ(舞台は有志による手作り)から南アフリカのソウェト、ドイツのハンブルクまで幅広い。アパルトヘイト時代の南アでこんなに大規模なライヴを行い、それを黒人と白人が一緒に楽しんでいたとは(人種によってエリアを分けるのではなく)。ほか、高名な「スタジオ・ワン」でのレコーディング風景や、レゲエやナイアビンギに関する説明もあり。これからレゲエに親しんでみようという方にもお勧めだ。監督はステファン・ポール。

映画『ボンゴマン ジミー・クリフ デジタル・リマスター』

3月22日(金)より、新宿シネマカリテほか全国ロードショー

出演:ジミー・クリフ、ナディーン・サザーランド、ムタバルーカ、バーバラ・ジョーンズ、ミリアム・マケバ、ボブ・マーリー

監督:ステファン・ポール 編集:ヒルデガルト・シュレーダー 撮影監督:マイク・コンデ、ウド・ヒッツラー、ハインツ・レクサー、ヘリベルト・シュースター
1981年/ジャマイカ・ドイツ合作/英語/93分/原題:Bongo Man
提供:ニューセレクト 配給:アルバトロス・フィルム
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公式サイト
https://jimmy-cliff-movie.com/