カンフーの達人の「姉愛」が爆発する痛快アクション作『ポライト・ソサエティ』

 大好きな姉とダメ男との結婚を阻止することに生命をかけた高校生の妹が主役の物語、といえばいいだろうか。妹はとにかく姉が大好き、だが相当に冷静に姉のことを見ている。だから姉がダメ男に夢中になっているのが許せない。だが姉はそれに気づかず恋に燃えている。まわりが見えない。それにそのダメ男はそんな姉の性質を利用しているようにも、妹には感じられる。つまり、そのダメ男は姉を大して愛しておらず、「陰謀」を成就させるツールとして利用しているのではないかという、そんな疑念も生じてくる。ダメ男はただダメなのではなく「狡猾」でもあったのだ。

 ここから先は本編における妹の一挙一動がひたすら雄弁に語る。いくら「冷静になりなよ、騙されているよ」と言ったとしても、それが言われた者の心に届くとは限らない。「いかに冷静に姉に伝えるか」、そして「いかに姉を冷静な気持ちにさせて、結婚を撤回することが良い道だと認識してもらうか」、ここが妹の腕の見せ所なのだが、彼女はカンフーの達人でもあり、結果、とんでもない肉体のキレや冴えが行動に反映されてしまう。ここが何とも面白い。心の綾と、フィジカルの鋭さがいったいとなっていて、さらにミュージカル仕立ての展開もはさまるので、とにかく飽きないし、次から次へと色鮮やかな扉が開いていくような感じだ。もちろん「イギリスの中でのパキスタン系ムスリム」としての心情も描かれている。

 監督はニダ・マンズール、姉はリトゥ・アリヤ、怒りに燃える妹は映画初主演となるプリヤ・カンサラが演じる。劇中歌の一つに、シレルズの「ママ・セド」、ケミカル・ブラザーズ「フリー・ユアセルフ」、浅川マキ「ちっちゃな時から」等が出るのもインパクト大。

映画『ポライト・ソサエティ』

8月23日(金)新宿ピカデリー、グランドシネマサンシャイン 池袋、ヒューマントラストシネマ渋谷 ほかロードショー

<CAST>プリヤ・カンサラ、リトゥ・アリヤ
監督・脚本:ニダ・マンズール
製作:ティム・ビーヴァン
2023年/イギリス/英語・ウルドゥー語/104分/シネスコ/カラー/5.1ch/G/日本語字幕:田渕貴美子/原題:Polite Society /後援:ブリティッシュ・カウンシル/配給:トランスフォーマー
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公式サイト
https://www.transformer.co.jp/m/politesociety/