高校のテコンドー部に所属するジュヨンと、少年院の学生(だが一時的に外に出て社会生活を送っている)イェジというふたりの少女の成長物語にして恋物語である。物語の舞台は1999年、当然スマホはない。性差別や階級差別などはごく当たり前で、運動部の男性コーチなど「暴力で部員を鍛えてやるのが当然」という感じで偉そうにしている。それに加えて部員の少女たちをしっかり「若いオンナ」としても見ているからタチが悪い。さらに先輩部員は後輩をいじめる。そんな時代に出会ってしまった、境遇の違う少女ふたりの、「ああ、このひとといるととても楽しいな。いい友達と知り合ったな」的な気持ちが、「なんだかいつもその人のことを考えてしまう」「このドキドキする気持ちは何だろう」に変わってゆくグラデーションを細やかに描いてゆく。

ふたりが出会うことになったきっかけも妙にドラマティック。1999年といえば、たしかにノストラダムスの「地球終末論」を口にする者も多々あった。この、16世紀フランスの予言者(本業は医師だったという)のリアリティがかろうじて生きていた最後の年であったかもしれないが、ジュヨンとイェジの心に「1999年7の月、空から恐怖の大王が降ってくる」というフレーズがいかに響いていたか、そのあたりも見どころのひとつになろうか。
ハン・ジェイ監督は、たまたま読んだ本の一節からこの映画の着想を得たという。パク・スヨンとイ・ユミのふたりは監督の望む以上のものを、この物語から引き出したに違いない。
映画『私たちは天国には行けないけど、愛することはできる』
3月14日(金)よりシネマート新宿ほか全国公開
監督:ハン・ジェイ
出演:パク・スヨン、イ・ユミ、シン・ギファン、キム・ヒョンモク
2024年/韓国/112分/ビスタ/DCP5.1ch/字幕翻訳:石井絹香/英題:NO HEAVEN, BUT LOVE/映倫【PG12】区分 配給:クロックワークス
(C)2024 SW Content, All Rights Reserved.