香港民主化運動から5年。故郷と母から離れることと引き換えに、若手監督が世に問う力作『香港 裏切られた約束』

 原題は『因為愛所以革命』。香港民主化運動を、鮮明な映像と音響で捉えたドキュメンタリー作品だ。監督のトウィンクル・ンアン(顔志昇)はパティシエだったが、2019年6月から、香港民主化運動の記録を一眼タイプのビデオカメラで撮影し始めた。が、その記録・編集・作品化を香港でしていては命の危険が伴う。そこでロンドンに亡命し、約5年の歳月を経て作品を完成させた。冒頭には監督の長めのメッセージが挿入され、ラストは今年6月20日に日本で行われた「日本香港民主主義サミット」の模様で締めくくられている。

 凄惨なシーンも数多い。若者どうしの争いの糸をひいているのは誰なんだ? 恋とか青春とか一番したい年頃なんじゃないのか? 挿入されるインタビュイーの話も真摯であり、学ぶところ大だが、2020年以降、活動家やメディアに対する規制はさらに強まり、ここで語っているひとたちも、収録から数年を経て、「行方不明」「服役中」「亡命」と、誰もが平穏無事ではない。まったく暗澹たる現実だが、識っておくべきことがここにある。

 なぜ“裏切られた約束”なのかというと、1997年7月1日に香港がイギリスから中国に返還されたとき、中国政府は少なくとも50年間は「一国二制度」のもとに香港市民の自由を保護すると約束したからだ。が、中国本土への犯罪人引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」の改正をきっかけに、その約束は反故にされ、2019年6月から、民主化を要求する上記の抗議活動が始まった。奇しくも天安門事件からちょうど30年というときである。

映画『香港 裏切られた約束』

8月30日からアップリンク吉祥寺、9月6日からアップリンク京都で公開 以後順次公開予定

監督:トウィンクル・ンアン 顔志昇
配給:アップリンク

公式サイト
https://www.uplink.co.jp/liberate_hong_kong/