「ごこうぐうのねこ」と読む。五香宮(ごこうぐう)とは、瀬戸内の港町「牛窓」にある鎮守の社を示す。2021年、映画作家の想田和弘とプロデューサーの柏木規与子が牛窓に移り住んだことも、作品づくりにつながっている。撮影は、およそ約1年間に及んでいるようだ。「ナレーション、説明テロップ、音楽を原則として使わない」姿勢は今回も健在。

タイトルに「猫」という文字が使われているだけあって、猫はそれなりに登場する。が、「かわいいニャー」「モフモフだニャー」「肉球ぷるぷるだニャー」という描き方ではない。猫の繁殖力はすさまじいし、野良状態で生きていれば糞尿もそこらにする。草花だって荒らすだろうし、さかりのつく時期は人間にとってはやかましい(猫サイドにとっては重要な愛のメッセージだとしても)。「五香宮には猫がたくさんいるから、何匹か捨てても大丈夫だよね」という気持ちなのか、ヨソから子猫を捨てに来る人間もいる。「これ以上猫が増えないように」、スタッフは猫をつかまえて去勢のために病院に連れていく。手つきや口調から、このスタッフが皆、猫が好きなのだということは伝わる。が、網に入れられてパニック状態になる猫、奇声をあげて抗う猫、麻酔を打たれて雑巾のようにペタッとなっている猫……。晴れやかな気分にはさせてはくれない。

ほか、住民の超高齢化、その中で暮らしていくことに決めた(彼らにとっては若者かつ新参者であろう)映画作家とプロデューサーの生活、地元ならではの風習などにもスポットが当てられる。エンディング数分前に訪れる「追悼」のコーナーに、いのちに対するリスペクトが感じられた。
映画『五香宮の猫』
10月19日より、東京:シアター・イメージフォーラム ほか全国順次公開
監督・製作・撮影・編集:想田和弘
製作:柏木規与子
配給:東風
2024年|119分|日本|16:9|カラー|DCP|ドキュメンタリー 英題:The Cats of Gokogu Shrine
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