「東海テレビのドキュメンタリー作品」というだけで身が引き締まる。ずっしりとした手ごたえ、そして「あなたの心はどう判断する?」的な問いかけがもたらされるのは必至だからだ。
モチーフとなるのは、1961年に三重と奈良にまたがる集落・葛尾で起きた通称「名張毒ぶどう酒事件」。詳しくは各自検索していただけたらと思う。事件からほどなくしてある男が犯人として捕えられたが、客観的証拠は不十分。よって一審判決では無罪となったが、どういうわけか二審では死刑判決が言い渡された。
その「どういうわけか」の連続、いやそんなレベルではないな、「どういうわけかの嵐」に、映画を観る者はいやおうなく巻き込まれる。「被疑者」は無実を訴え続けて獄中死したが、死んだからといって「じゃあその人物が犯人決定、一件落着」とされては、残された家族はいたたまれない。是が非でも無実を勝ち取り、墓前に伝えるのだ――。
映画タイトルに出てくる「いもうと」は、この「被疑者」の、撮影当時94歳の妹のことを示す。「再審請求は配偶者、直系の親族及び兄弟姉妹しかできない」ということを、私はこの映画で初めて知った。兄を知り、理解し、誇りに思っているに違いない「いもうと」は、まさに全人格をかけて、再審の請求をし続ける。弁護団も非常にシンパセティックだ。なのに、どうして。
プロデューサーの阿武野勝彦は、東海テレビを退職前の最後の題材として、この事件に取り組んだという。また途中では、袴田巖・元死刑囚の姿も登場する。ナレーションは、「名張毒ぶどう酒事件」を描いたテレビドラマ/映画『約束 ~名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯~』で被疑者を演じた仲代達矢が担当している。監督は鎌田麗香。
映画『いもうとの時間』
2025年1月4日(土)よりポレポレ東中野、ヒューマントラストシネマ有楽町にてロードショー!
製作・配給:東海テレビ放送
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