どうしたら人はわかりあえるのか? ベルリン国際映画祭で最優秀ドキュメンタリー賞&観客賞をW受賞『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』

 スマホはこんなにもクリアに惨事を捉えるのだ。あまりにもクリアなので最初の数分間はドラマの映画を見ているような気分にもなった。が、これは「リアル」なのだ。噴き出る血も、丸腰の人々と武装した集団のやりとりも、胸に刺さるような悲鳴も、爆音も、すべてがその場で起こったそのままなのだと思うと、やるせなさすぎて言葉が出ない。

 作品の舞台であるマサーフェル・ヤッタは、ヨルダン川西岸のパレスチナ人居住地区。イスラエル軍の占領がどんどん地元の人々を追いやっている。だがこの『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』制作の中心に位置するのは、パレスチナ人のバゼル・エイドラとイスラエル人ジャーナリストのユヴァル・アブラハームのふたり。故郷の村を守ろうとする青年がいて、その地で何が起こっているのかを記録し、世界に知ってもらいたいと考える報道人がいる、ということだ。

 収録期間は2023年10月まで、約4年間に及んだという。相当につらい場面も含めて、けっして目を閉じず、網膜に浸透させて、感じてくださいというしかないが、誰もが、誰かから生まれた「人の子」であり、軍服を着て威嚇している連中も家に帰れば親孝行だったりもするのだろうし兄弟や子供たちにとって優しい存在かもしれないのだ。武装をといて車座になれば気の合う友達どうしにだってなれるかもしれない。なのに、どうして。今年2月に開催されたベルリン国際映画祭でも反響を集め、世界の映画祭で30もの賞を獲得、第97回アカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞にノミネートされてもいる。

映画『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』

2025年2月21日(金)TOHOシネマズ シャンテ、シネ・リーブル池袋 ほか全国ロードショー

監督:バーセル・アドラー、ユヴァル・アブラハーム、ハムダーン・バラール、ラヘル・ショール
2024年/ノルウェー、パレスチナ/アラビア語、ヘブライ語、英語/5.1ch/95分/G/原題:NO OTHER LAND/日本語字幕:額賀深雪/字幕監修:高橋和夫/配給:トランスフォーマー
(C)2024 ANTIPODE FILMS. YABAYAY MEDIA

公式サイト
https://www.transformer.co.jp/m/nootherland/