ディズニー大好きのベイリー監督が愛をこめて制作した“ミッキー史上初のホラー映画”『マッド・マウス ~ミッキーとミニー~』

 本編に入る前に、「ただし書き」というか、「イントロダクション」がある。これが無類に面白い。「我々がディズニーをいかにリスペクトしているか、それをわかってほしかったなあ」的な、アニメーション界でひときわ高い階級にいるであろう関係者に対する、さみしさ、皮肉、諧謔などが混ざり切ったような文章が、巧みに翻訳された字幕と共に目に入ってくるのだ。

 ここでガッチリ心をつかんで、あとはもう、やりたい放題という感じ。パブリックドメインになった『蒸気船ウィリー』(1928年)を基にしたストーリーをジェイミー・ベイリー監督(制作・編集・撮影も)がホラー映画化した、ということだが、物語の主な舞台は「現代のゲームセンター」。筋書きからはダークサイド全開という印象を受けた。あのキャラクターが、こんなに邪悪だったなんて。こんなに血や暴力に飢えていたなんて。こちらとしては、「うひょー」という声が飛び出そうになるのだが、考えてみれば、何十年も24時間365日笑顔に徹して子供たちを喜ばせるという行為も、相当マッドでクレイジーなことであり、愛されキャラだろうがなんだろうが、やっぱり「吐き出し口」は必要なのだ。誰が生き残るか、「マッド(狂的)」なのはネズミキャラの面々だけなのか? 手に汗握りながら観てほしい。出演はマッケンジー・ミルズ、ニック・ビスクペック、ダミール・コヴィッチほか。原題は『The Mouse Trap』(ねずみとり)。

映画『マッド・マウス ~ミッキーとミニー~』

3月7日(金)より新宿ピカデリーほか全国公開

監督・制作・編集・撮影:ジェイミー・ベイリー 脚本・製作:サイモン・フィリップス 作曲:ダーレン・モルゼ
出演:ソフィー・マッキントッシュ、マッケンジー・ミルズ、サイモン・フィリップス、カラム・シウィック
2024年/カナダ/英語/カラー/5.1chデジタル/スコープサイズ/94分/原題:MOUSE TRAP 配給:ハーク 配給協力:FLICKK
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