「見たことのない見せ方をしてくる映画」である。とあるカテゴリーが歳月を経て成熟していくと、とかくそう思われがちになるといってもいいであろう概念「あらゆる手法が出尽くしてしまって、もう新たな開拓余地はない」などということは実際のところはないのだ、少なくともクリエイティヴな感性の持ち主がいれば、ということも、ありありとわかってくる。その点では衝撃的というしかない一作だ。でありながら、おそらくこれは、大部分のひとに新鮮な感銘を与えるに違いないエンターテイメントとしても成立している。

カメラが捉えている(=われわれの視界に入る)場所は、基本的に変わらない。つまり、固定されている。舞台演劇を見ているようなものだ。その場所で、太古から現在までの歴史の間、どんな営みがあったのかが描かれていく。とはいえ、たとえば前半の何分の1かは太古のセクションで、後半につれて今に近づく、という編年体の描き方ではない。一種、歴史をザッピングするような形で映画は進行する。「ある地点」(アメリカ建国後は、同国のどこかの州に属しているのであろう)に暮らす、家族をどう描いていくか。とくに20世紀以降の描写では「服装」「自動車」「通信手段」「その当時のヒット音楽」がどんなものか、「どの戦争の前か後か」が重要なファクターとなる。そうした箇所の描き方のキメ細かさにも唸らされた。
また、「より現在に近いところ」ではその土地に建つ家にアフリカ系アメリカ人の親子が住んでいる。父が子に教えるのは「警官にはとにかく徹底的に慇懃にすること」。私はとっさにエリック・ガーナー氏やジョージ・フロイド氏が絶命させられた事件を思い出す。
リチャード・マグワイアのグラフィックノベルを原作に、ロバート・ゼメキスが監督。夫婦役のトム・ハンクスとロビン・ライトは、VFXを使って、高校生から老人期までを演じた。
映画『HERE 時を越えて』
4月4日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
監督:ロバート・ゼメキス
原作:リチャード・マグワイア 脚本:エリック・ロス&ロバート・ゼメキス
出演:トム・ハンクス ロビン・ライト ポール・ベタニーケリー・ライリーミシェル・ドッカリー
2024年/アメリカ/英語/104分/カラー/5.1ch/ビスタ/原題:HERE/字幕翻訳:チオキ真理 提供:木下グループ 配給:キノフィルムズ
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