「OKA」(オカ)はカンボジアの言語で“チャンス”という意味。このドキュメンタリー映画は、同地でそう呼ばれたボランティア男性、「ひとりNGO」こと栗本英世(くりもとひでよ)にスポットを当てた1作だ。氏は1996年にカンボジアに入り(内戦終了後)、村人たちと共に地雷を取り除き、学校を建て、人身売買の根絶に奮闘した。惜しくも2022年に亡くなってしまったが、映画製作のプランは相当前から進んでいたのだろう。非常によく構成された作品との印象を受けた。

そして、なぜ「手ぶらでやってくるのか」というタイトルなのかもわかってくる。お金を与えたところでそのお金を使い切ってしまえば、あとは物乞いを続けることになる。長い目で見れば、知識や技術を身に着けることが自分を、まわりを助けることになる。だから彼は教育活動に精を出した。その子供たちはいまや大きくなったが、「OKA」への感謝を忘れることがない。
なぜ日本人が単身カンボジアに? どうしてそこまで熱心に行動を? そうした、本人が生きていたら真っ先に尋ねてみたくなるようなことに関しても、作品中でばっちり説明されている。人身売買に関する箇所には目と耳を覆いたくなるが(とくに母娘のエピソードには)、では日本でこういうことがまったく起きていないと誰が言えるのか。監督・牧田敬祐、東京ドキュメンタリー映画祭2024長編部門コンペティショングランプリ受賞作品。
映画『OKAは手ぶらでやってくる』
5月10日より、新宿K’s cinema 他全国順次ロードショー
朗読・監督:牧田敬祐 制作:松林展也 小林洋一 脚本:牧田敬祐 撮影:吉本憲正 桜田純弘 梅本承平 鶴岡由貴 録音・編集:細川雅浩 MA:吉田一郎(スレダボ) ガリレオクラブ題字:糸田トコ アニメーション:徳永尚和 バリアフリー字幕:COMプラニング デザイン:塩山一志 押方泰彦 Web:Haising 助成:文化庁文化芸術振興費補助金(映画創造活動支援事業) 独立行政法人日本芸術文化振興会 製作:特定非営利活動法人 映像記録 ウェストサイドプロダクツ 配給:ミカタ・エンタテインメント
2024年/日本/90分
(C)2024 NPO法人映像記録/ウェストサイドプロダクツ