上級国民の優雅な趣味は、「人間狩り」であった―――要注目の「不快な一作」。『我来たり、我見たり、我勝利せり』

 億万長者・マイナート家の物語。この家にはとにかくカネがある。莫大な土地に城のような家を建て、使用人がうじゃうじゃいる中で、毎日の生活を送っている。まわりがヘコヘコして、こちらが何か妙なことをしても、勝手に責任をとってくれる。政治家とも癒着しまくり。世界が自分のために回っている感覚なのだろう。当然、子供も超上級家庭がいく学校に通っているのだが、スポーツをやればズルをするし、うなるほどのカネがあるくせにゲーム感覚で万引きもする。が、ばれなきゃいいのだし、ばれたところで反省などしない。する必要がないのだ、うなるほどのカネで相手を黙らせればいいのだ。

 一家の長・アモンは家族には優しい父であり夫であり、皮膚の色の違う子供(里子だろうか)にも差別感情は抱いていないようだ。が、彼には、目をそむけたくなるようなストレス解消の方法があった。「狩り」である。しかも人間を「狩る」のだ。そしてある時から、そこに娘も合流する。この娘がまた、やけに射撃の才に富んでいて、一撃必殺なのである。ひとがやたらめったら凶弾に倒れて血を噴き出すのだから、そりゃあ話題にもなるし警察も動く。さあ、マイナート親子に手錠がはめられる日は来るのか? 執事アルフレート、新聞記者カロッタ、「狩り」の目撃者アイロスらが輝かしいほど「まとも」に見えるのも本作のミソであろう。監督はダニエル・ヘールスとユリア・ニーマン、ヘールスはウルリヒ・ザイドルの助手だったことがあるという。

映画『我来たり、我見たり、我勝利せり』

6月6日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿武蔵野館他全国順次公開

監督:ダニエル・ヘースル、ユリア・ニーマン
製作:ウルリヒ・ザイドル
出演:オリヴィア・ゴシュラー、ウルシーナ・ラルデ、ローレンス・ルップ、マルクス・シュラインツァー、ゾーイ・シュトラウプ
2024年/オーストリア映画/ドイツ語/86分/カラー/5.1ch/スコープサイズ/原題:Veni Vidi Vici 字幕翻訳:吉川美奈子 後援:オーストリア文化フォーラム東京 映倫PG12 配給:ハーク 配給協力:フリック
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公式サイト
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