「人情のありがたみ」や「血の争えなさ」を、エンタテインメント性たっぷりの描写の中から再認識させてくれる作品といえばいいか。『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』が今も語り草のスタジオGDHが送る一作だ。本国タイでは2024年4月に公開され、年間最大のオープニング成績を記録。若者を中心に大流行し、世界中で約120億円超の記録的ヒットに繋がったという。

主人公を演じるのはビルキンという呼び名で親しまれている、プッティポン・アッサラッタナクン。2022年にはサマソニにも登場した人気俳優・歌手だ。彼が扮するエムは、毎日を垂れ流すように生きている青年。大学もやめて、ゲーム実況者で生活していきたいと考えている。そんなとき、従妹・ムイが、豪邸を相続したことを知る。連日の介護が、祖父の心を動かしたのだろう。そこでエムは考える。俺もカネを得て楽したい。そうか、介護か。俺には祖母・メンジュがいて、しかも一人暮らしで、病気を患っている。よし、俺も祖母に思いっきり近づいて相続を得るぞ。
とはいえ、やっぱり根がいい人なのだ。祖母と過ごす日々は彼の「下心」を拭い去るに十分なものだった。が、楽しい毎日はそう長く続くものではない。祖母の体調がどんどん悪化していくからだ。悪化しきった先には「相続」が待っていて、エムがイージー・マネー状態になる確率は限りなく上昇する。が、そんなことはもはや問題ではない、おばあちゃんに生きていてほしい、一緒の時間をもっと過ごしたい、とエムの心情が移り変わっていく。と共に、物語の冒頭よりも、彼の表情がぐっと優しくなっている。
私は年齢的にも「エムの父(メンジュの息子)」の、ああどうしようという心情モロ出しの安定しなさに共感してしまうのだが、この世の中、誰もが誰かの子供であり、孫である。そういう意味では限りなく広い層に向けた映画ともいえよう。監督・脚本はパット・ブーンニティパット、メンジュ役は本作で長編映画デビューを果たしたウサー・セームカム。
映画『おばあちゃんと僕の約束』
6月13日(金)より新宿ピカデリーほか全国順次公開
監督・脚本:パット・ブーンニティパット 脚本:トッサポン・ティップティンナコーン 製作:ワンルディー・ポンシティサック ジラ・マリクン 音楽:ジャイテープ・ラーロンジャイ 撮影:ブンヤヌット・グライトーン 編集:タマラット・スメートスパチョーク
出演:プッティポン・アッサラッタナクン ウサー・セームカム サンヤー・クナーコン サリンラット・トーマス ポンサトーン・ジョンウィラート トンタワン・タンティウェーチャクン
2024年/126分/タイ/原題:Lahn Mah/カラー/5.1ch/1.85:1
日本語字幕:小河恵理 後援:タイ国政府観光庁 配給:アンプラグド
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