ブリティッシュ・ロックのふるさとのひとつ、農場の中にある名スタジオに迫るドキュメンタリー映画『ロックフィールド 伝説の音楽スタジオ』

 特定のスタジオに焦点をあてるドキュメンタリー映画といえば、昨年公開された『音響ハウス Melody-Go-Round』を思い出す。東京・銀座にある「音響ハウス」ゆかりのベテラン・ミュージシャンが、あえて新人シンガーを迎えて、1曲を作り上げていく場面が印象的だった。

 いっぽう、本映画で特集されているスタジオ「ロックフィールド」は、英国ロンドンから西へ230キロ、ウェールズの農場の中にある。必然的にレコーディングは合宿的な色彩を帯び、大自然の中で音楽家は(おそらく)アンプをフルテンで鳴らし、健康を体じゅうにみなぎらせながらシャウトして、傑作を次々と作り出したはずだ。なかでも有名なものはクイーン「ボヘミアン・ラプソディ」、コールドプレイ「イエロー」など。1997年には、英国の国内ベスト・アルバム10枚のうち7枚がここで収録されたという。

 ハンナ・ベリーマン監督は、スタジオの成り立ちだけではなく、創立者のキングズリーとチャールズのウォード兄弟がバンドを組んでいたことにも触れている。ミュージシャンとして成功することはなかったが、彼らの音楽への情熱、よりよい環境でロックしたいんだという気持ちによって生まれたセッティングの数々が、後進ロック・ミュージシャンにとっての“やりやすい環境”に直結したことは音楽の歴史にとってとても幸せなことだった。

 ロバート・プラント(元レッド・ツェッペリン)ら関係者の証言は実に生々しく、兄ノエルとの対立エピソードも混ぜつつ息をするようにFワードを吐くリアム・ギャラガー(元オアシス)のしゃべりは下品だが、それでこそリアムだという気もするし、そうした清濁併せ呑むのがロック・ミュージックで、ロックフィールド・スタジオだったのだ、と結論づけたくもなる。

 1月28日から新宿シネマカリテ、ヒューマントラスト渋谷、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開。

映画『ロックフィールド 伝説の音楽スタジオ』

1月28日(金)より新宿シネマカリテ ほか全国順次公開

監督:ハンナ・ベリーマン
撮影:パトリック・スミス
編集:ルパート・ハウスマン
音楽:アレクサンダー・パーソンズ
出演:キングズリー・ウォード、チャールズ・ウォード、オジー・オズボーン、ロバート・プラント、リアム・ギャラガー、クリス・マーティン、ティム・バージェス、ジム・カー
2020年/イギリス/ドキュメンタリー/96分/シネスコ/2.0ch/原題:Rockfield:The Studio on the Farm /日本語字幕:大塚美左恵 配給・宣伝:アンプラグド
(C)2020 Ie Ie Rockfield Productions Ltd.

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