つげ義春の「海辺の叙景」「ほんやら洞のべんさん」をモチーフとした一作だが、音楽でいうところのメドレーでもマッシュアップでもない。入れ子構造になっていて、その移り変わりが楽しい。

夏男と渚がふと出会い、一度それぞれの位置に戻って、翌日も出会い、台風が近づいている、どう考えても寒い海で刹那的に泳ぐ――これは、この映画の中では“映画内映画”である。アングルが変わると、これは授業の一環として、脚本家の李が、「海辺の叙景」を原作にした映画を上映していたところなのだ――ということがわかる。もちろん李は脚本を手掛けているのだが、個人的には満足とは程遠い仕上がりだったようで、さえない表情をする彼女に魚沼教授は「気晴らしに旅行にでも行くといい」と勧める。その数日後に教授は急逝、あれこれあって教授の形見のフィルムカメラを手にすることになる。
カメラを連れての旅行だ。ここから我々はスクリーンを通じて李の動きを追うようになり、またある時は李の視点で映し出される物事にふれることになる。古い宿の主人・べん造とのシュールなやりとりは、まさしく「つげ義春ワールド」であろう。監督は『ケイコ 目を澄ませて』、『夜明けのすべて』などで知られる三宅唱、出演はシム・ウンギョン、堤真一、河合優実、髙田万作、佐野史郎ほか。
映画『旅と日々』
11月7日(金)TOHOシネマズ シャンテ、テアトル新宿ほか全国ロードショー
シム・ウンギョン 堤真一 河合優実 髙田万作 佐野史郎 斉藤陽一郎 松浦慎一郎 足立智充 梅舟惟永
監督・脚本:三宅唱
原作:つげ義春「海辺の叙景」「ほんやら洞のべんさん」
製作:映画『旅と日々』製作委員会
製作幹事:ビターズ・エンド、カルチュア・エンタテインメント
企画・プロデュース:セディックインターナショナル
制作プロダクション:ザフール
配給・宣伝:ビターズ・エンド
(C) 2025『旅と日々』製作委員会