海外のミュージカルを日本で身近に感じてもらおうと立ち上がった「松竹ブロードウェイシネマ」が好評だ。私もドルがこんなに高くなる前はしばしばニューヨークにミュージカルを見に行っていたが、どちらかというと繁華街のシアター・ディストリクトよりもオフ・オフ・ブロードウェイが主現場だったので、なんというか、大きな劇場で収録された、よくオーギュメントされた名作を見るのは、新鮮な感触である。

「松竹ブロードウェイシネマ」は2017年の特別上映の成功を受け、19年4月からシリーズ化されている。去る10月31日から始まった「松竹ブロードウェイシネマ2025秋」では、『エニシング・ゴーズ』、『インディセント』、『タイタニック』という、トニー賞を総なめにした3作品が味わえる。コール・ポーターの書いた歴史的な楽曲が味わえる『エニシング・ゴーズ』は上映が済んだが、11月14日からはピューリッツァー賞受賞の劇作家ポーラ・フーゲル原作による『インディセント』が1週間限定公開される。音楽は“クレズマー”と呼ばれるタイプのものが主で(アニメ「魔法使いサリー」の主題歌を思い出す人もいるだろう)、クラリネットやヴァイオリンがフィーチャーされている。物語は1907年のポーランドが舞台、“売春宿の娘と、その父のもとで働く女性の恋愛”という、当時としては(今も?)驚天動地であったに違いない出来事が、ジューイッシュ社会の風景と共に描かれる。「この物語の設定する時代から30数年後に、ポーランドで作られたのがアウシュヴィッツ収容所だったのだ」と考えてみると、物語がいっそう生々しく、切なく感じられた。
11月28日から1週間限定公開されるのは『タイタニック』。レオナルド・ディカプリオ主演映画が記録的な大ヒットを示した、あのタイタニック号の物語である。映画でこれでもかと示された船のデカさ、途方もない人の多さ、容赦ない水の勢いなどが舞台でどう描かれるのか、これは見てのお楽しみというしかないが、文章を書くという二次元的な職業についている私も「見せ方」について新たな視点を得た気になったのだから、映画や舞台に関係する人が見ると、もう、膝を叩きっぱなしなのではなかろうか。最後まで演奏し続けたと伝えられる音楽隊は、このミュージカルでは、果たして……。音楽はモーリー・イェストンが担当。
「松竹ブロードウェイシネマ2025秋」
11月14日(金)~「インディセント」
監督&演出:レベッカ・タイチマン
原作&脚本:ポーラ・フォーゲル
出演:リチャード・トポル、カトリーナ・レンク、アディナ・ヴァーソン、他
米国/2017/ビスタ/105分/5.1ch/日本語字幕スーパー
(C)Carol Rosegg
11月28日(金)~「タイタニック」
出演:グラハム・ビックリー、マーティン・アランソン、ブリー・スミス、ジェームズ・ダーチ、他
英国/2023/ビスタ/135分/5.1ch/日本語字幕スーパー
(C)Pamela Raith
配給:松竹
(C)BroadwayHD/松竹