リーアム・ニーソン出演101本目となる作品。金融ビジネスマン一家に突如訪れた恐怖を描く『バッド・デイ・ドライブ』

 『シンドラーのリスト』や『96時間』シリーズで知られるベテラン、リーアム・ニーソンの映画出演101本目となる作品。私など彼の名を聴くと途端に「超人」というフレーズが浮かんでくるのだが、今回は妻、ふたりの子供と暮らすビジネスマン・マットを演じる。金融の仕事がハードなのだろう、いささか家族をなおざりにするところもあるし、子供(とくに兄)はなかなか難しい年ごろだ。が、よくある家庭といえばよくある家庭ではある。

 物語の舞台はドイツのベルリン。朝、マットは子供たちを後部座席に乗せて彼らが通っている学校に向かう。子供を学校に送り届ける父親――まあ、おだやかな図である。が、ほんの少しあと、携帯電話に謎の着信が来る。そこから物語はどんどんダークかつデンジャラスな方向に進み、しだいに観る者をハラハラさせてゆく。謎めいた声が受話器越しに「車に爆弾を仕掛けた。通報するな。ドアを開けるな」と伝え、恐喝する。なんで俺の車に? よりによってどうして子供と一緒の時に? と考えている間も、ほぼない。

 同様に爆弾が仕掛けられた車が、ドアをあけた途端に次々と爆発している図を、マットは街頭ビジョンで見た。そして、容疑者扱いされていることも。だが、逃げようとして、もしくは外部の者に自分の無実を証明しようとして車のドアを開けたとたん、大爆発する可能性もあるから、とにかく車の中にいて、車を走らせ続けるしかない。犯人からの命令は矢継ぎ早に飛び、それは妻も巻き込んだ。

 「子供の命」、「妻の命」、「自分の命」をまさか、天秤にかけざるを得なくなる時が押し付けられるとはマットも思っていなかったことだろう。が、物語が進むにつれ、このアクシデントが決して偶然のものでもない、いいかえればマットはそれほど反感を買う行為もしてきたのだ、ということもわかってくる。しかも先にも書いた通り、彼は警察から「容疑者」扱いされているのだ。そこからエンディングまでは、とんでもないスピード感をまとってまさに一気呵成である。

 上映時間は90分余り。車に乗るまでのエピソードをふくらませたり、親子の関係性をもっとウェットに描けば120分ぐらいの尺にはなったろう。が、クールに、ドライに、映画は進む。そのテンポの良さが、見ているこちらを引き付けてやまない。妻のヘザー役を演じるエンベス・デイビッツとリーアムの顔合わせは、なんと『シンドラーのリスト』以来であるという。監督ニムロッド・アーントル、12月1日から全国公開。

★映画『バッド・デイ・ドライブ』

12月1日(金) 新宿ピカデリーほか全国ロードショー
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公式サイト
https://bdd-movie.jp/