『映画版『WE-入口と世界の出口』』、題材は2073年の日本。監督が「芸術の可能性を追い求めたひとつの証」と語る意欲作

 2073年の日本を題材にした話題の舞台を映像化した一作。「2073年」など、ちっとも遠い未来ではない。あと48年すればやってくる。ちなみに今から48年前は1977年、ピンクレディーが大ブレイクした頃だ。そのくらいの距離しかない。

 さてこの映画で描かれている2073年、日本国民は上級、中級、下級に分けられ、表面上では平等を謳われているものの、誰もがお互いを監視し合う社会となっていた。この「表面上」というのがミソだ。つまりいちいち相手の心の中を読んでいかなければならない。表面上のコミュニケーションにとどめておかなければ、何がどうなるかわからない。結果としてこれは人心に多大な負担を強いる。それに上級の中でもその中に細かいカースト制のようなものがおのずから生まれよう。ランキングがあれば一番になりたいのが人間の本性であろうからだ。

 舞台だから一発撮り、舞台だから同じ空間でパフォーマンスが続く。その“場所”となったのが、人間社会の中で治外法権的な場所として唯一残っていた“スペースE”。そこは隔離された場所なのかオアシスなのか、それは見る者の判断にゆだねられることだろうが、打楽器の即興演奏、本物の人とカメラがとらえた人(大きく壁に映し出される)のコントラスト、時にミュージカル的な展開、モノクロ着色の効果、ホーミー的なヴォイスの使い方など、私は描写の多彩さにもしっかり酔った。音楽は下町兄弟が担当している。監督・脚本・振付は小池博史。

映画『映画版『WE-入口と世界の出口』』

11月29日よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開

監督・脚本・振付:小池博史 美術:山上渡
出演:松島誠、今井尋也、福島梓、中谷萌、下町兄弟(pc. rap) 音楽:下町兄弟
プロデューサー:白尾一博 撮影:小林基己・澤平桂志・柴田和也・櫻井莉紗 録音:吉田朋央・佐々木亨 編集:GENDAI EXPERIMENTAL LAB 衣装:浜井弘治 映像:白尾一博・澤平桂志 小道具:森聖一郎、中谷萌 照明:富山貴之 宣伝美術:梅村昇史 主催:株式会社サイ 制作:穂坂裕美、黒田麻理恵、中谷萌、栁澤梨夏 共催:EARTH+GALLERY、株式会社黒山社中、ライフアートユニオン 協賛:蓑田秀策 配給:小池博史ブリッジプロジェクト-Odyssey/株式会社サイ
【2025年/65min/パートカラー/DCP/1.85】
(C)小池博史ブリッジプロジェクト-Odyssey/株式会社サイ

公式サイト
https://kikh.com/works/we_movie/