150分を超える長編。描き方がひじょうに丁寧、たっぷりと行われている印象を受けた。とくに前半の幸せな場面はずいぶん念入りに紹介されているのだが、これがあとで利いてくる。主人公の不幸、孤独、他者からの無理解が深まれば深まるほど、前半の幸せな日々が際立ってくる。ああ、やはりこの映画には長い尺が必要だったのだな、とも思った。

タイトルに登場する「マルドロール」とは、危険な小児性愛者を監視する秘密部隊の名称。主人公のポールはここに属している。時代は1995年、場所はベルギー。憲兵ポールの役割は、あまりにも謎めいた少女失踪事件の犯人を追うこと。若さもあるのだろう、意気込みたっぷりで、嗅覚の鋭さゆえか、犯人に対する目星もついている。だが、その先がどうにもうまくいかない。というのは当時のベルギーは憲兵隊、自治体警察、司法警察がしのぎをけずっていて、といえばいささかかっこよくもあるが、ようするに相手を出し抜こうと陰湿にやりあっていたのだ。ひとつががんばろうとするともうひとつは姑息な手でそれをやめさせて、つまり、そうしている間にも、犯罪は増え、治安は悪化していく。
映画のサブタイトルにある「腐敗」そのものの情景が描かれていくのだが、エンディングはなぜか詩的で、そこに私はファブリス・ドゥ・ヴェルツ監督の美しいセンスを感じた。不勉強にして私には初耳の名前だが、『変態村』『地獄愛』『依存魔』という<ベルギーの闇3部作>も残しているという。そちらも見たくなった。
なお、この『マルドロール/腐敗』は、1995年のベルギーで実際に起こった事件をもとに、監督が想像力をふくらませたものであるという。映画の中では1996年、2003年の物語も描かれる。第81回ヴェネツィア国際映画祭 公式セレクション選出作品、第57回シッチェス・カタロニア国際映画祭 最優秀長編作品賞ノミネート作品。ポール役はアントニー・バジョン、ほかローラン・リュカやベアトリス・ダルも登場する。
映画『マルドロール/腐敗』
11月28日(金)より 新宿武蔵野館 ほか全国順次公開
監督:ファブリス・ドゥ・ヴェルツ
脚本:ファブリス・ドゥ・ヴェルツ、ロマン・プロタ 撮影:マニュエル・ダコッセ 音楽:ヴァンサン・カエイ 編集:ニコ・ルーネン
出演:アントニー・バジョン、アルバ・ガイア・クラゲード・ベルージ、ローラン・リュカ、ベアトリス・ダル
2024年|ベルギー・フランス|原題:Maldoror|フランス語|155分|1.78:1 |カラー|G
提供:エクストリーム 配給:アンプラグド
(C)FRAKAS PRODUCTIONS – THE JOKERS FILMS – ONE EYED – RTBF – FRANCE 2 – 2024