映画『THE END(ジ・エンド)』、地下シェルターでは何が起こっていたか? デストピアとミュージカルの融合を記す話題作

 さまざまな驚きで包んでくる一作といえようか。舞台となるのは「地下シェルター」。取り返しのつかない環境破壊により地上は居住不可能となり、生物はほぼ絶滅して、とあるひじょうに裕福な一家が、そのシェルターを得て、毎日をそれなりにつつがなく暮らしている。シェルター内にはプールもあるし、美術好きな母は住みかの内装にも凝っている。だが息子は地上で暮らしたことがなく、「かつて暮らせた」という地上を、世界を体験したいという気持ちを持っている。

 病気や寿命で人が減ることはあるかもしれないが、決して人が増えることはないであろう毎日。が、そこになぜか、ひとりの少女が入ってくる。坑道で意識を失っていた彼女を、ほったらかすわけにはいかない。「なぜ、ひとりだけ、入ってくることができたか?」、私も含めて誰もが抱く疑問だろう。そのあたりがスムーズに説明された後、彼女は「シェルター生活」への適応に全身でぶつかっていくことになる。なかなかぶっ飛んだ展開に感じられるかもしれないが、このあたり、「新しいシチュエーションに慣れていく必要性」と考えれば、それは我々の日常にゴロゴロ転がっている。私は身近な事柄に結び付けて、このスケール感の大きなストーリーを鑑賞した。

 「広いシェルター」といえ「密室」であることに変わりはないので、閉塞感もしっかり伝わってくるけれど、それをいい具合に散らしてくれる要素が「歌」だ。そう、この作品はミュージカル映画なのだ。だから登場人物は、セリフだけではなく歌もたっぷり歌い、なかでも少女役のモーゼス・イングラムによる歌唱は圧巻に感じられた。監督・共同脚本はジョシュア・オッペンハイマー、これは彼にとって初めての長編であるそうだ。主演とプロデュースはティルダ・スウィントン。

映画『THE END(ジ・エンド)』

2025年12月12日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほか全国公開

監督:ジョシュア・オッペンハイマー 脚本:ジョシュア・オッペンハイマー ラスムス・ハイスタ―バーグ
出演:ティルダ・スウィントン ジョージ・マッケイ モーゼス・イングラム ブロナー・ギャラガー ティム・マッキナリー レニー・ジェームズ / マイケル・シャノン
原題:The End/2024年/デンマーク・ドイツ・アイルランド・イタリア・イギリス・スウェーデン・アメリカ合作/148分/シネマスコープ/カラー/デジタル/字幕翻訳:松浦美奈 配給:スターキャットアルバトロス・フィルム 宣伝:東映ビデオ
(C)Felix Dickinson courtesy NEON ?courtesy NEON

公式サイト
https://cinema.starcat.co.jp/theend/