チェコの鬼才監督ヤン・シュヴァンクマイエルの、「最後の長編劇映画」が遂に一般公開。ほか話題作も同時上映

 チェコの鬼才監督ヤン・シュヴァンクマイエル(1934年9月生まれ)の、日本では約10年ぶりとなる特集上映が行われる。

 『蟲』は、監督自身が「自分にとって最後の長編劇映画」と宣言した一作。やはりチェコ出身であるチャペック兄弟の戯曲『虫の生活』の第二幕「捕食生物たち」に取り組むアマチュア劇団の物語、といえばいいか。彼らにはどことなく「なあなあ」のところがあって、遅刻したりサボっているとしか思えない団員もいて、どうにも閉まらない。演出家は実にまじめに怒るのだが、コオロギ役を兼ねているため、「コオロギのコスプレをしてやたらプンスカしている人」に見えてくるのがミソ。途中から3つの主題(テーマ)が交互に登場するような、音楽で言えばフーガのような展開になる。シュヴァンクマイエルのアクの強さ、「裏の裏は表ではなくて、さらにそのまた別の裏」的な見せ方に惹かれる90分余りだ。

 同時公開の『錬金炉アタノール』は、一種の自伝的作品といえばいいか。シュヴァンクマイエル自身が語るように若い時代のフッテージはほぼなく、主に「おじさん」または「おじいさん」となった彼はフィーチャーされる。長く共同創作を続けた妻のエヴァ・シュヴァンクマイエロヴァーや、プロデューサーのヤロミール・カリスタについても触れられているし、歌舞伎についての感想や日本のファンに対する印象も率直に述べられている。

 『クンストカメラ』は、コロナ禍によるロックダウン中に撮り始めたという一作。ロシアのサンクトペテルブルクにある博物館ではなく、チェコの南西部ホルニー・スタニコフにあるお城と旧穀物庫に所蔵されているものが紹介されている。一切のナレーションや、「いつどこで誰が制作した何」などの説明はなく、ヴィヴァルディの「四季」がひたすら流れるなか、時に謎めいた物音が混じる。

 8月23日からは東京・LIBRAIRIE6にて「エヴァ&ヤン・シュヴァンクマイエル博物誌」展が開催される。

映画『蟲』

2025年8月9日から東京・シアターイメージフォーラムほか全国順次上映

同時公開『錬金炉アタノール』『クンストカメラ』
特集上映「ヤン・シュヴァンクマイエル レトロスペクティヴ2025」も同時開催

<蟲>
監督:ヤン・シュヴァンクマイエル
2018年/チェコ・スロバキア/チェコ語/98分/原題:Hmyz
字幕翻訳:北村広子 字幕監修:ペトル・ホリー 字幕協力:イメージフォーラム 提供・配給:ザジフィルムズ/クープ
(C)Athanor Ltd.

公式サイト
https://www.zaziefilms.com/insect/