昨年亡くなったデイヴィッド・リンチ監督が1996年に発表した約3時間の長編が、4Kで1月9日より新宿ピカデリーほか全国順次公開される。

「難解」という声もあるようだが、そもそもリンチは全体の脚本を完成させないまま、思いついたシーンをそのつど撮影していったというではないか。どうつなぐか、最終的にどんな形になるかなど(おそらく)考えていなかったに違いない。今やりたいことを映像に刻み込むことを優先したのだろう。見る者は、その瞬間瞬間を楽しめばいいのではないか。また本編は、すべてSONY DSR-PD150(デジタルビデオカメラ)で収録されたともきく。すさまじい顔のアップのところも、顔よりも背景にピントがあっているようなところもある。画角などしゃらくせえ、という感じのアングルもある。「そうしたかったから、そうしたまでだ」という意思と、「どうとでも解釈してくれ」という自由さを私は感じてやまない。それでいて、主人公のローラ・ダーンは、映画への主演が決まった女優を演じているので、「映画内映画」というべき凝った描写もあり、「職人的なうまさ」と「ある程度の偶然性を求めたラフな感じ」が同居しているのも本作の面白さであるなあと私は思った。
デイヴ・ブルーベック(ポール・デスモンドのサックスがフィーチャーされる)、マントヴァーニ、クシシュトフ・ペンデレツキなどの楽曲を挿入し、ラストにニーナ・シモンの強烈な「シナーマン」を持ってくるあたりのセンスの鋭さにも唸らされるし、冒頭とラストが相似形を描くところなど、なんというか、第1楽章のメロディがコーダにも登場する交響曲に接しているような気分にもさせる。上映時間が長いから気軽に観るのは難しいかもしれないが、カタルシスが得られることは請け合いだ。
監督・脚本はリンチ、製作はメアリー・スウィーニーとリンチが共同で担当。出演はローラ・ダーン、ジャスティン・セロー、ジャスティン・セロー、ハリー・ディーン・スタントン、ナオミ・ワッツ、ナスターシャ・キンスキー、裕木奈江ほか。
映画『インランド・エンパイア 4K』
2026.1.9(金)より新宿ピカデリー ほか全国順次公開
出演:ローラ・ダーン ジェレミー・アイアンズ ジャスティン・セロー ハリー・ディーン・スタントン ウィリアム・H・メイシー ジュリア・オーモンド ローラ・ハリング ナスターシャ・キンスキー ナオミ・ワッツ
監督・脚本:デイヴィッド・リンチ 製作:メアリー・スウィーニー デイヴィッド・リンチ
2006年/180分/アメリカ/カラー/ドルビーSRD/ビスタサイズ/4K 日本語字幕:林完治 配給:アンプラグド
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