映画『ブーニン 天才ピアニストの沈黙と再生』、まさにタイトル通りの内容。19歳でショパン国際ピアノコンクール優勝を果たした神童、ブーニンの現在地

 1980年代に彗星のごとく現れた神童というと、私は即座に二人の名を思い出す。トランペットのウィントン・マルサリスとピアノのスタニスラフ・ブーニンである。どこか「おっさんくさい音楽」と思われていたところが間違いなくあったジャズやクラシックを、その時代の若者(私は10代前半だった)に、ファッションやルックスも含めて、ポップなものとして提示した。とくにブーニンは海外ニュースを扱うテレビ番組などでも盛んに取り上げられていたと記憶するし、これは私だけかもしれないが、当時は大巨匠ウラジーミル・ホロヴィッツが音楽生活のラストランに入っていたので、その枯淡ぶりと勝手に並べて、ブーニンの「天才」、「神童」性を心の中で際立させていたところもある。

 日本で数多くの公演(ホール以外でも)を行うだけでなく、チャリティ・イベントでも演奏し、幅広い層に生のピアノの音を届けてきたブーニンだが、いつしか彼の名前が聞かれる割合は減った。その間に何があったのかが、この映画で解き明かされる。「ピアニスト生命が終わるかも」というようなハードな体験をしてもなお、ある種の執念を持って、注意深く事に当たり、妻の尽力を経て、音楽やピアノへの愛を満たしながら、ふたたび人前での演奏へと立ち上がってゆくさまが、人生に挫折経験のある者の心に響かないわけはないと感じる。「今(カムバック後)のブーニン」の演奏がたっぷり視聴できるのも作品の価値につながっている。監督・中嶋梓。

映画『ブーニン 天才ピアニストの沈黙と再生』

2026年2月20日(金)全国公開

<出演>
スタニスラフ・ブーニン 中島ブーニン榮子 小山実稚恵 ジャン=マルク・ルイサダ 桑原志織 反田恭平 亀井聖矢

<スタッフ>
監督:中嶋梓 総合プロデューサー:小堺正記 製作:宮田興 遠藤徹哉 共同プロデューサー:吉田宏徳 苗代憲一郎 服部紗織 山田駿平 撮影:宮崎剛 編集:髙木健史 音楽監修:スタニスラフ・ブーニン 音楽録音:深田晃 音響効果:三澤恵美子 公演収録:メディア・フォレスト 製作:NHK エンタープライズ/KADOKAWA 制作:NHK エンタープライズ 映像提供:NHK 特別協力:日本アーティスト サントリーホール 協賛:藤野英人 ダイキン工業 伊藤忠商事 岩谷産業 阪急電鉄 三井住友銀行 村上財団 サントリー 大和ハウス工業 配給:KADOKAWA
2026年/日本/111分/5.1ch/カラー
(C)2026「ブーニン 天才ピアニストの沈黙と再生」製作委員会

公式サイト
https://movies.kadokawa.co.jp/bunin/