2005年に公開されて高い評価を得た一作が、4Kリマスター化。『トニー滝谷 4Kリマスター版』として3月27日より、角川シネマ有楽町、シネマート新宿ほか全国順次公開される。

原作は村上春樹「レキシントンの幽霊」所収の「トニー滝谷」。映画の前半はトニー滝谷の生い立ち(といえばいいか)、後半は、とある出会いと別れ、そこから広がるさまざまな出来事について描かれている。ちなみにトニー滝谷という名前は本名、父親の滝谷省三郎は戦前から活動するトロンボーン奏者で78回転のジャズ・レコードをたくさん所有している。トニー自身は音楽の道には進まなかったが、芸術へのセンスというか、穏やかな中に何となく光る趣味の良さはおそらく父親から受け継いだものなのだろう。
トニー滝谷と省三郎を演じるのはイッセー尾形、トニーの人生に多大な影響を及ぼすA子とB子を演じるのは宮沢りえ。ともに一人二役なのだが、その鮮やかな演じ分けが、画面のおだやかな色味(リマスターにあたって、市川準監督からポストプロダクション全般を任されていた撮影監督・広川泰士の指示のもと、白黒とカラーの間ある中間色を再現するためのグレーディング作業を重ねたのだという)と快いコントラストを描く。本来ならナレーターが読むような箇所の一部を役者自身がカメラ目線で語る、という演出も当時としては斬新だったに違いない。ピアノの響きを生かした坂本龍一の音楽も印象的だ。
映画『トニー滝谷 4Kリマスター版』
3月27日(金)より 角川シネマ有楽町 ほか全国順次公開
配給:アンプラグド
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