各地の映画祭をにぎわした傑作『おろかもの』が遂に公開! 女性二人の企みは、果たして成就するのか?

 百聞は一見にしかず!

 話題の映画『おろかもの』が遂に、11月20日・12月4日~12月10日テアトル新宿、12月18日~21日シネ・リーブル梅田にて、レイトショー公開される。

 田辺・弁慶映画祭でグランプリを受賞し高評価を得た映画『空(カラ)の味』で撮影を務めた芳賀俊、監督作品『ボーダー』が映文連アワードで準グランプリを受賞した鈴木祥が共同で長編初監督を務めた作品だ。『愛がなんだ』の今泉力哉監督や『横道世之介』の沖田修一監督などを輩出した田辺・弁慶映画祭で、グランプリを含む史上初の最多5冠を受賞。SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2019では観客賞を受賞し、ドイツ・ニッポンコネクション2020にも正式招待されている。

 会社員の健治と高校生の洋子は、両親を亡くしたあと二人で暮らしている。健治には婚約者・果歩がいて、傍目にも仲睦まじい。というのに健治は、時間をどうにかやりくりして、別の女性・美沙との関係も続けていた。その現場を見た洋子は兄のだらしなさに腹を立て、結婚式まであと1ヵ月の男性と平然とつきあう美沙にも腹を立てた。

 後日、健治を尾行の上、再び浮気しているところを目撃。ホテルでふたりがわかれたあと、カフェで食事をしていた美沙にツカツカと歩み寄り、思っていることを怒りいっぱいにぶちまけた。

 しかし美沙には、洋子が一方的に思っていたような“悪さ”や“ずるさ”とも、“どろぼうねこ性”とも縁の薄い、なんともいえない魅力があった。兄の目を盗んで二人で会っていくうちに不思議な友情が生まれ、「健治と果歩の結婚式を止めよう」と意気投合する。さあ、そのためには、誰がいかに行動するのが最善の策なのか……。

 動き、セリフ、設定、展開、すべてがユーモアに富んでいて、ちょっとサジ加減を違えたらドロドロしそうなストーリーなのに軽やか。「こんなに暖かく楽しい意表の付き方」に出会わせてくれる映画はなかなかないなあ、という結論に達した。名場面は多々あるけれど、電気スタンドのあかりだけがともるなか、ようかんをモグモグ食べる“将来の義姉妹”の背中が映し出されるシーンは面白くも哀愁があった。

 洋子を演じる笠松七海の存在感がすごい。兄のことが好きで嫌いで大好きで、兄の結婚は嬉しいんだけどどこかでずっと兄妹だけで暮らしたい気持ちもあって、兄の浮気は許せないんだけど浮気相手の女性の持つ「兄を好きにならずにはいられない」という気持ちには共感してしまう。「兄はウソをつくと首の横を掻くんです」と、美沙に得意げに説明する表情は絶品。「私はあなたの知らない兄のことをこーんなに知ってるんですよ」と心の中で豪語しているのだろうな、と想像させられた。

 エンディング・テーマが耳に入るずっと前からもう、「笠松七海」という名前は忘れようとしても忘れられなくなる。

映画『おろかもの』

11月20日・12月4日~12月10日テアトル新宿にて、12月18日~21日シネ・リーブル梅田にて、レイトショー公開
<キャスト>
笠松七海、村田唯、イワゴウサトシ、猫目はち、葉媚、広木健太、林田沙希絵、南久松真奈
<スタッフ>
監督:芳賀俊・鈴木祥 脚本:沼田真隆 主題歌:「kaleidoscope」円庭鈴子 配給・宣伝:MAP+Cinemago 2019年/日本映画/96分/16:9/カラー
(C)2019「おろかもの」制作チーム

公式Twitter https://twitter.com/orokamono_movie