家族を持ってしまった者の苦悩を濃厚に描く『ヤクザと家族 The Family』がいよいよ1月29日に公開。主題歌にも注目!

 2019年公開の映画『新聞記者』で大きな話題を集めた藤井道人監督と、映画会社スターサンズが再びタッグを組んだ。それが1月29日(金)から全国公開される『ヤクザと家族 The Family』だ。

 いわゆる任侠映画は昭和の時代にたくさんあって、ぼくもずいぶん浅草や銀座の映画館のレイトショー上映で観た。が、「平成のヤクザ」をとりあげ、しかもそこに「家族」というファクターを重ね合わせる作品が出ようとは、この作品に関するインフォメーションを得るまで、一度たりとも、想像すらしなかった。

 しかもこれ、「1999」「2005」「2019」のそのときどきの物語を描いた3部構成のクロニクルなのだ。20年間に何が変わったか? 何に追い詰められていったか? ぼくは観終わったあと、その時代時代の政権はどうだったのか調べたり、その時期にどんな事件(暴力事件に限らず)が起きていたかに思いを巡らしてしまった。ところで、“反社”という言葉を最初に考えた奴は誰なんだ?

 主人公の山本には、今回初のヤクザ役となる綾野剛が扮し、山本がこよなく慕う柴咲組組長・柴咲を舘ひろしが演じる。ふたりは今回が初共演、しかも舘ひろしのヤクザ役は『地獄の天使 紅い爆音』以来43年ぶりなのだそう。

 濃厚に描かれるのは苦悩であり、時代の趨勢との合わなさであり、暴力団という疑似家族と実際の家庭の両方を持ってしまった(あるいは持とうとしている)者のジレンマでもある。

 さらに、こんなに女性の出番のあるヤクザ関連映画も稀なのではないかとも思う。尾野真千子、寺島しのぶの存在感も濃厚、暴力団事情に通じる刑事(岩松了が演じる)の、つねに漁夫の利を求めているような感じ、対岸の火事を「よう燃えておるな」とばかりに見物するかのような底意地の悪さにも目を見張った。

 そしてこの映画、今の音楽の面白さに夢中になっている者には、なんとも嬉しい箇所がある。millennium paradeの「FAMILIA」が主題歌として流れるのだ。King Gnuでも活動する常田大希や井口理、WONKのキーボード奏者である江﨑文武、現代を見つめる世界最高峰のジャズ・ドラマーと呼びたい石若駿たちが生み出す猛烈なうねりが、約2時間20分の作品を劇的に締めくくる。彼らには、綾野剛みずから楽曲のオファーをしたときく。才人は才人を知るのだ。

映画『ヤクザと家族 The Family』

1月29日(金)全国公開

<キャスト>
綾野剛 尾野真千子 北村有起哉 市原隼人 磯村勇斗 / 寺島しのぶ 舘ひろし

<スタッフ>
監督・脚本:藤井道人
音楽:岩代太郎
主題歌:「FAMILIA 」 millennium parade(ソニー・ミュージックレーベルズ)
配給:スターサンズ/KADOKAWA
(C)2021『ヤクザと家族 The Family』製作委員会

オフィシャルサイト:https://yakuzatokazoku.com/