明日は我が身。コロナ禍における、庶民の社会的孤立を描いた『夜明けまでバス停で』

 現実のむごさをうつしだす作品だ。けっこう繁盛している居酒屋で卑怯なマネージャーからのいやがらせにもめげず生活のために必死にアルバイトをして、どうにか暮らしていた女性が、コロナを理由にリストラされてしまう。どこか別の職を見つけようとしても、そこには年齢の壁がある。やがて住むところも失い、払われるはずだった退職手当も出ず、バス停で寝泊まりをするように。上級でもない限りこの国が助けたり救わないのは半ばわかりきったこととはいえ、ヒントすらない状況の毎日がどれだけこの女性を痛めつけたか。かわりに接近してきたのは、希望の光ではなく、強奪、殺人という名の闇である。

 コロナ元年、2020年11月に起きた「渋谷ホームレス殺人事件」をモチーフにした作品であるという。実際の事件は石の詰められたペットボトル(何ミリリットルのものかは不明)が凶器となったらしいが、この映画には独自の演出がある。どちらにしても、健康で、体力があれば、防ぐことも難しくなかったのではないか。だが被害者は死んだ。抵抗するパワーはとうに消え失せていたのだろうし、「こんな人生、もういい」と思っていたのかもしれない。ただひたすら、後味の悪い事件である。

 この事件を、映画の中に、どう落としこんで、観客に呼び掛けていくか。そこにベテラン・高橋伴明監督ならではのセンスを感じたい。主人公には板谷由夏が扮し、大西礼芳、三浦貴大。松浦祐也、ルビーモレノ、片岡礼子、土居志央梨らも重要な役どころを演じている。脚本は梶原阿貴。10月8日より新宿K’s cinema及び池袋シネマ・ロサ他にて公開。

映画『夜明けまでバス停で』

10月8日(土)より新宿K’s Cinema、池袋シネマ・ロサ他全国順次公開

<キャスト>
板谷由夏 大西礼芳 三浦貴大 松浦祐也 ルビーモレノ 片岡礼子 土居志央梨 あめくみちこ 幕雄仁 鈴木秀人 長尾和宏 福地展成 小倉早貴 柄本佑 下元史朗 筒井真理子 根岸季衣 柄本明

<スタッフ>
監督:高橋伴明 脚本:梶原阿貴 音楽:吉川清之 主題歌:Tielle 「CRY」(ワーナーミュージック・ジャパン) 製作:人見剛史 小林未生和 長尾和宏 髙橋惠子 エグゼクティブプロデューサー:鈴木祐介 プロデューサー:角田陸 小林良二 見留多佳城 神崎良 佐久間敏則 撮影監督・編集:小川真司 照明:丸山和志 録音:植田中 美術:丸尾知行 装飾:藤田徹 衣装:青木茂 ヘアメイク:結城春香 VFX:立石勝 アクセサリー指導:ななし・水城 制作担当:櫻井陽一 助監督:塚田俊也 配給:渋谷プロダクション 制作会社:G・カンパニー 2022/JAPAN/ビスタ/5.1ch/DCP/91min
(C)2022「夜が明けるまでバス停で」製作委員会

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