映画『stay』が待望の公開。「劇場という空間で観ていただくことができて、感謝しています」

 持ち主のいない古い空き家で共同生活を送っている男女5人。そこへ村の役所から派遣された矢島が、彼らに退去勧告を言い渡しにやってくる。しかし矢島は、リーダー格の男・鈴山のペースに巻き込まれ、立ち退きを説得できないどころか、その家で一晩を明かす羽目になり……。映画『stay』がいよいよ4月23日、公開を迎えた。

 家の人々に立ち退きを迫りながら、いつの間にかその家に引き込まれて行く主人公・矢島を演じるのは、主演した東京国際映画祭正式出品作『あの日々の話』(19)での細やかな演技が印象深い山科圭太。躊躇なく意見を言うマキには、上田慎一郎らが監督し話題を集めた『イソップの思うツボ』や東京国際映画祭正式出品作『猿楽町で会いましょう』『うみべの女の子』主演で注目の石川瑠華。家の中心的役割を担う鈴山役は、白石和彌組の常連で、『ロストパラダイス・イン・トーキョー』(09)で演じた知的障害者役で評価を集めた菟田高城が軽やかに好演。滞在者の分の家事も行っているサエコは、奥田庸介監督の『ろくでなし』や春本雄二郎監督の『かぞくへ』でヒロインを務めた遠藤祐美が、包みこむような柔らかさの中に芯もある絶妙な存在感で演じている。

 本作は、芳泉文化財団の映像研究助成を受けて制作され、第20回TAMA NEW WAVEで初上映され、2020年のSKIPシティDシネマ国際映画祭の短編部門では審査員の満場一致でグランプリを受賞。満を持しての劇場公開となった。

 この度、アップリンク渋谷での公開の初日舞台挨拶に、出演の山科圭太、脚本・出演の金子鈴幸、藤田直哉監督が登壇した。

 3人共、口を揃えて、「こういう時期に初日を迎えられて、お客さんに見ていただけて、皆さんに感謝しています。」と感謝の言葉から始まった舞台挨拶。

 観客と一緒に、5月20日に閉館が決まったアップリンク渋谷のスクリーンで鑑賞した藤田監督は、「シネスコで撮って良かったと思います。昨年のSKIPシティ(国際映画祭)では(コロナ禍の中での開催で)パソコンでしか観られなかったのが、劇場の空間で見ることによって、良く見えたと思います」と映画館のスクリーンでの上映に手応えを感じた様子。

 藤田監督は、撮影の時に印象的だったこととして、「僕が演出していない部分で、矢島の人格・人間が変わる瞬間を山科さんが自然とやってくださったこと」を挙げた。

 本作脚本の金子は、滞在者2役で出演しており、あるシーンの行動は、藤田監督曰く「この映画唯一の笑いどころ」とのことで、金子は、「撮っている時は『やっちゃった感』があったけれど、今の視点で見ると、ジェンダー的な意味で面白い」と述懐し、山科も「普遍的な題材を扱っている」と同意した。

 金子によると、「『stay』の最初の稿は、犯罪を犯して逃亡してきた人を追跡してくる人がいるというSFだったけれど、面白いことをやるためにリアリティをそぎ落とすのは止めよう」と、今の稿になったそうで、監督は、「パンフレットに初稿のラストを掲載させていただいたので、比較してください」と話した。

 最後のメッセージとして、山科は、「これから公開が続いていくので、ご感想をお知り合いに言っていただければと思います。いろいろと思われることがあるかと思いますが、この映画について話したり考えたりしていただければ嬉しいです」と話した。

映画『stay』

アップリンク渋谷にて公開中 全国順次公開

[キャスト]
山科圭太 石川瑠華 菟田高城 遠藤祐美 山岸健太 長野こうへい 金子鈴幸

[スタッフ]
監督:藤田直哉 プロデューサー:井前裕士郎 脚本:金子鈴幸 撮影:井前隆一朗 照明:中田祐介 録音・整音:坂元就 美術:中村哲太郎 音楽:関口諭  ヘアメイク:石松英恵 スチール:柴崎まどか 助監督:山本英 プロダクションマネージャー:大塚安希 撮影助手:関瑠惟 照明助手:松島翔平 美術助手:清水夏海 美術助手:山田祥子 宣伝デザイン:内田美由紀(NORA DESIGN) 製作:東京芸術大学大学院映像研究科 助成:芳泉文化財団助成作品 配給:アルミード
2019 / 日本 / カラー / シネマスコープ/ DCP/ 39min
(C)東京藝術大学大学院映像研究科

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