速水萌巴監督初の長編「クシナ」待望の公開。郁美カデールは、母親役の廣田朋菜を「いとこのお母さんだと思って演じていました」

 映画『クシナ』が7月24日、公開初日を迎え、アップリンク渋谷で初日舞台挨拶が行われた。登壇したのは、本作にて主演で女優デビューした郁美カデール、クシナを14歳で産んだ母親役の廣田朋菜、速水萌巴監督ら。本作に懸けた想いなどを語った。

 冒頭、本作主演で女優デビューの郁美カデールは、「初めての舞台挨拶ですごく緊張しています。初心に戻って前髪を切ってきました! 似合っていますか?」と明るく挨拶して会場を盛り上げ、廣田朋菜は、「親子の話というよりは、私は見終わった後に希望が見える映画だと思ったので、大変な中、皆希望を持って生きていけたらなと思い、そういうメッセージを楽しんでいただけたらと思います。」と満席のお客さんに向かって挨拶した。

 速水萌巴監督は、「本作は、私が早稲田の大学院の修士の4年生の時に作った作品で、ここアップリンク渋谷にあるカフェ・タベラでカメラマンの村松さんと最初の打ち合わせをしたので、完成させてまたここに戻ってこれたことを嬉しく思っています。街中で撮影出来る内容ではないので、撮影前は、『アニメの方がいいのでは』などと言われたのですが、こうやって完成したことを皆さんに感謝しています」と本作に懸けた想いを語った。

 監督は実はクランクインの数日前までクシナに合う役者さんが見つからなかったが、ヘアメイクさんに見せてもらった写真で、当時9歳の郁美カデールさんにお願いすることになったと説明。4年前、急に「今日会えるか?」と言われた郁美カデールは、「本当に何の役かもわからなくて、来てと言われて行ったら、『主役だよ』と言われて、絶対やりたいと思っていました」と話した。監督が郁美カデールは当時「この半分くらいのサイズで」と言うと、廣田もすかさず、「私は身長をめっちゃ越されてる!」と郁美カデールの成長ぶりに興奮を隠せない様子。

 山梨など遠くの山での撮影があると聞き、最初はお母さんが出演に反対したそうだが、郁美カデールは、「『できるの?』(と聞かれ、)『やりたい!』の一点張りでした」とのことで、それを聞いた廣田は、「意志の強さがクシナと通じるところがあるんじゃないですか?」と納得。「色んな約束をしてましたよね? 宿題やる! 頭を1人で洗う! とか」と可愛らしいエピソードが飛び出し、会場は笑い声に包まれた。

 廣田は、クシナ役が決まらないままの本読みについて、「マジやべえと思っていました」と言い、会場は爆笑! 「監督の世界観が出来上がっていて、それに合う子がいないって言っていたのですが、映画ってこういうことが多々起こるんです。絶対に見つかると思っていました」と当時を振り返った。

 廣田が演じるカグウは、14歳の時にクシナを産んで、今28歳という役で、あまり母性が感じられない役。カデールは、撮影当時は9歳だったので、カグウは自分が演じたクシナのお母さんだということを認識しないまま演じたそう。「お母さんじゃない。でもお母さんだから、正直、いとこのお母さんだと思って演じていました」と告白した。

 廣田は、演じたカグウについて、「閉鎖されたところにお母さんに連れてこられて生活しているという設定だったので、何もかも諦めている、自分の選択の余地がない役だなと思った」とのことで、監督は、「廣田さんは、お芝居に入るとスッと目から光がなくなるんですが、お芝居が終わって普通に喋っていると、ガラスのような目で、目がツルッとした輝きがあるんです。私はこれでカグウをやってほしいと思って、廣田さんとオニクマ役の小野みゆきさんと私とで何回かリハーサルをして、ああいう幼い感じのカグウを一緒に作りました」と舞台裏を披露した。

 お母さん役の小野みゆきとの撮影時のエピソードとして、カデールは、「一緒に演技をするシーンがあったんですけれど、すごい迫力なんです。」と話し、廣田は、「ロケでずっと一緒だったんです。大人チームはお泊りもしていたので、母と子みたいにお風呂も一緒に入ったんです。小野さんは遠くからすーっと私を見て、『廣田さん、スタイルいいね』と言われ、『恥ずかしいよ、なんすかー』と。あんなスタイルのいい方に言って頂けて、うれしかったです」と話した。

 廣田は、「見ていただいたらわかるんですけれど、アップが多く、役者の表情を捉えてくれているので、そこにぜひ注目してもらえればと思います。」とメッセージを送り、初日舞台挨拶は終了した。

映画「クシナ」

アップリンク渋谷にて公開中 全国順次公開
<キャスト>
郁美カデール
廣田朋菜 稲本弥生 小沼傑
小野みゆき
<スタッフ>
監督・脚本・編集・衣装・美術:速水萌巴
撮影:村松良 撮影助手:西岡徹、岩田拓磨 照明:平野礼 照明助手:森田亮 録音:佐藤美潮 整音:大関奈緒 音楽:hakobune ヘアメイク:林美穂、緋田真美子 助監督:堀田彩未、佐近圭太郎、宮本佳奈 制作協力:村上玲、小出昌輝 協力プロデューサー:汐田海平 配給宣伝:アルミード
(C)ATELIER KUSHINA
2018 / 日本 / カラー / 70分 / アメリカンビスタ / stereo
公式HP:https://kushinawhatwillyoube.com/