「源氏物語」を現代に再構築した『窯変源氏物語-夕顔-』が上演中。「伝えたいことがたくさん隠されている作品です」(山本一慶)

 朗読・芝居・音楽・歌・舞の一体化によって、「源氏物語」が現代に蘇る――――。

 9月15日から、東京池袋・あうるすぽっとにて、山本一慶、岸本勇太、市瀬秀和、舞羽美海による『窯変 源氏物語-夕顔-』が上演中だ。『窯変 源氏物語』とは、橋本治・著の「源氏物語」の現代語による再構築訳。原作は女房の語りで綴られているのに対し、こちらは光源氏の視点からの一人称で書かれている。朗読・芝居・音楽・歌・舞で表現するスタイルの朗読劇として2008年に舞台化されたが、この2023年版では「夕顔」を新たなキャストとともに、大衆演劇の若手座長・津川鵣汀(つがわ・らいちょう)の舞を挿入しながら送る。

 光源氏という男の遍歴と、新内多賀太夫(しんない・たがたゆう)によるオリジナル楽曲が絡み合いながら、“橋本治の源氏物語の世界”へと誘い込むさまは、けだし圧巻。三味線・語りの新内多賀太夫、篠笛の望月輝美輔、箏の金子展寛による演奏も実に興味深く、琴が凝ったベース・ラインを奏でるパートなど、楽曲には和洋折衷の面白み、ほどよいミクスチャー風味もそなえていて、洋楽ファンである私もごく自然に「夕顔」の世界に入っていくことができた。

山本一慶コメント
初日を無事に迎えることができました。

源氏物語の光源氏はとても有名ですが、僕自身あまり触れてこなかったので、今回朗読劇という形で触れ、あの時代の背景や恋愛、リアルに書けない部分の表現がとても興味深く、永く愛されている理由を感じています。

この作品は、“朗読で役を演じているのではなく、朗読をしている人たちがいて、その朗読を皆さんに聞かせている”という2重構造になっていて、僕は“男”という立ち位置でモテる光源氏役を楽しく読んでいます。現代でしたら「最低」と言われそうですが(笑)。そしてほんの一節ですが、和楽器と一緒に歌います。なかなかない経験で、喉の使い方も違って新しい挑戦をしています。

伝えたいことがたくさん隠されている作品です。難しい言葉や、聞き馴染みがない言葉もありますが、古典ということであまり気構えずに、光源氏の物語を楽しむために、ふらっと立ち寄っていただけたら。皆さまに、言葉よりも想いを届けられたらいいなと思っています。

岸本勇太コメント
朗読劇は久しぶりですが、朗読劇であって動きのある舞台でもあり、いろんな要素が混ざっている作品です。

言葉だけでは伝わりきれない部分を、生演奏や舞などほかの伝え方がたくさんあり、そこをお客さまがどの様に楽しんでくみとってくださるのか楽しみです。

稽古を重ねている中で、同じ文章を読んでいても解釈が変わってきて、もはや正解ってなんだろうみたいなところもあるので、本番でも見つけていきたいと思っています。

僕が演じる男は、物語をふかんで語っているところと、当事者になって発言しているところがあり、差が大きい役どころです。作品を通して観た時、スピード感など変化をつけられるよう意識して演じています。

僕自身、教科書の授業ぶりくらいの古典作品で、和楽器や舞との共演もほぼ初めての挑戦です。僕が普段やっているお芝居と融合した時、この空間でしか生まれない繊細な部分がこのお芝居にはたくさんあります。その空気感を大切にしていけたら。劇場でお待ちしております。

市瀬秀和コメント
いよいよ開幕いたしました。この作品はただ読むだけではなく言葉で伝え、お客さまの中で想像してもらわないといけません。演出の岡本先生から、「あまり動きすぎるとお芝居になってしまい、お客さまがその目線になってしまうと話が入ってこなくなる」ということで、「いま光源氏がこの状態で、夕顔とこういう状況になってますよ」と、何が行われているかポイントを伝え情景をお客様に見せる。目をつぶってもわかるものを目指し、読み聞かせ、場面転換みたいなセリフをとても意識しています。

今回、和楽器が鳴っているのに和装をしていない自分が不思議で、演奏を聞いていると1歩出るだけでも、ふと和装の形になりそうになって(笑)。しかも朗読劇の出演は少ないので改めて難しさを感じました。

生音の中でやる朗読劇はぜんぜん空気が違い、僕らも音にならなきゃいけない気がしています。よくセリフは歌のように、歌はセリフのようにと言いますが、そんな朗読劇になったら理想かなと思っています。

舞羽美海コメント
とても緊張しています。世界観や日常で話す言葉ではなく、役のセリフとナレーションがあり、みんなでバトンリレーのようにつないでいくので、お客様には流れるように楽しんでいただけたらいいなと思っています。

今作では生演奏がとても贅沢で、舞も私たちの声では表現できない想いや、その情景を演じてくださり、とても見応えがあります。役者たちの動きも普通の朗読劇より多くの情報をお客様に投げかけているので、楽しく観ていただけたら嬉しいですし、そこがこだわりでもあるので繊細なところもお見逃しなく!

セリフの掛け合いは現代的に直している所もありますが、難しい言葉があっても悩まず、ただただこの世界に入っていただけたらと思います。終わってからも原作本やWebなどからいろんな情報を得られるので、家でしっとり楽しんでいただいて、9月18日まで上演しておりますので、また劇場に再確認に来ていただけたら嬉しいです。

舞台『朗読・芝居・音楽・歌による… 窯変 源氏物語―夕顔―』

9月18日(月・祝)まで、東京池袋あうるすぽっと(豊島区立舞台芸術センター)にて上演中

<キャスト/スタッフ>
作:橋本治(中央公論新社 刊)
構成・演出:岡本さとる
音楽:新内多賀太夫
出演:山本一慶、岸本勇太、市瀬秀和、舞羽美海 / 津川鵣汀(舞)
演奏:【三味線・語り】新内多賀太夫、【篠笛】望月輝美輔、【箏】金子展寛

カメラマン:山副圭吾
(C)2023 ArtistJapan

公式サイト
https://artistjapan.co.jp/performance/yohengenji-monogatari2023/