映画『恐るべき子供たち 4Kレストア版』。メルヴィル+コクトー+ドカエの出会い。即興性を重視した名作フランス映画が4Kレストアで蘇る!

 海外の古典的名作を映画館で見る機会はどんどん少なくなっているような気がする。家でソフトを見るのも配信で見るのもたしかに映画体験ではあるが、真っ暗な館のなかでスクリーンにうつる「異文化」と対峙するのは実に楽しいものだ。終わった後にカタルシスを伴う2時間前後のトリップ、これは実はすごく贅沢なのではないかという思いは、自分が年を重ねるごとに強くなっていくばかりである。

 1950年のフランス映画『恐るべき子供たち』(Les Enfants Terribles)の4Kレストア版が10月2日から東京シアター・イメージフォーラム、以後、横浜シネマリン他で全国順次ロードショーされる。

監督:ジャン=ピエール・メルヴィル
原作・脚色:ジャン・コクトー
衣装:クリスチャン・ディオール

 という、いまや歴史上の存在と言ってもいい顔ぶれがこの時代は健在で、アイデアを交わし、この1本をつくりあげたというだけで個人的には「参りました」という感じだ。人生は短く、名作の寿命は永遠。それを改めて思い知る。

 コクトーは、「これまで映画化の申し込みをすべて断っていたが、メルヴィルならば私の考えていた16ミリ風な即興を生かす映画作りの息吹を実現してくれるだろうと考えた」と、1976年の日本初公開時のインタビュー(今回のパンフレットに再録)で答えた。この“即興”が、個人的には大きなポイントだ。

 撮影を担当したのはアンリ・ドカエ。57年制作のルイ・マル監督作品『死刑台のエレベーター』も手がけた名手である。『死刑台~』にはマイルス・デイヴィスの音楽ともども、モダン・ジャズの、一瞬先がどうなるかわからないような、はらはらさせる即興魂があった。アンリ・ドカエのインプロ撮影は突如、あそこで始まったわけではなかったということだ。

 『恐るべき子供たち』は語られつくされた作品だと思うが、制作公開当時ならともかく、今を生きている映画ファンの何割が見ているかと考えたら、そうたいしたパーセンテージは出なさそうだ。“即興を生かす映画作り”の魅力、「ああ、もうこのときにこういう撮り方が生まれていたんだ」的気づき、『恐るべき子供たち』はいろんな発見を運んでくれることと思う。リマスターされた生々しい音質や画像、モノクロの陰影に酔いしれること間違いなし。

映画『恐るべき子供たち 4Kレストア版』

10月2日(土)より、[シアター・イメージフォーラム]他にて全国縦断公開決定!

監督・脚本:ジャン=ピエール・メルヴィル
脚本:ジャン・コクトー/ジャン=ピエール・メルヴィル
撮影:アンリ・ドカエ
衣装デザイン:クリスチャン・ディオール
出演:ニコール・ステファーヌ/エドゥアール・デルミット
[1950年|105分|フランス|モノクロ|スタンダード 4Kデジタルリマスター版|DCP・Blu-ray] 日本語字幕:横井和子/監修:中条省平

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