1970~80年代に世界最高セールスを記録したロック/ポップ・シンガーのひとり、リンダの軌跡を追った『リンダ・ロンシュタット サウンド・オブ・マイ・ヴォイス』

 “ROCKUMENTARY2022 極上のロック・ドキュメンタリー”と題し、ロックの歴史を彩ってきたミュージシャンや場所に因むドキュメンタリー3作品が劇場公開される。

 第1弾は、4月22日(金)から新宿シネマカリテ、ヒューマントラスト渋谷ほかでロードショーの『リンダ・ロンシュタット  サウンド・オブ・マイ・ヴォイス』。第63回グラミー賞で最優秀音楽映画賞受賞を受賞した、2019年米国公開作品だ。

 ファンの方ならご存知かと思うが、リンダは難病をわずらったことで2009年にライヴ活動を中断、11年に引退宣言をおこなった。その彼女が当ドキュメンタリーに積極的に協力し、近影をみせ、もう聴けないかもしれないと思われていた歌唱まで聴かせてくれる。彼女の決意に敬意を表しつつ、今また、この映画によってリンダの歌唱と存在が日本で再認識されたら、なんて嬉しいことかとも思う。

 兄姉とのフォーク・トリオで活動を始めた最初期のこと、ストーン・ポニーズでの日々、父からの音楽的影響、ロサンゼルスでのブレイク秘話、のちにイーグルスとなる面々との出会い、アサイラム・レコーズでの大ブレイクと、リンダの歌唱に通じる歯切れよさで内容は快調に進んでいく。ミュージシャンなど関係者のコメントも、リンダがいかに才気に富むシンガーだったかを的確に証明する。個人的には、一時恋仲を噂されたサックス奏者デヴィッド・サンボーンのコメントも聞きたかったところだ。

 80年代以降、念願のジャズ・アルバムの制作(フランク・シナトラ等のアレンジを手がけたネルソン・リドルと組んだ3枚)、ドリー・パートンやエミルー・ハリスとのカントリー・テイストいっぱいの“トリオ”、自らのルーツのひとつであるメキシコを意識したプロジェクトのこと、ニューオリンズ出身の歌手アーロン・ネヴィルとのデュエット(ミュージック・ビデオの演出では「実際につきあっているようにふるまう」ことが求められたようだ)、声楽への取り組みと、彼女の歩みは広がるばかり。彼女にしてみたら、どんどんカテゴリーをぶち破り、いろんなところで自らの美声の可能性を探ってみたかったのだろう。だが、その冒険を、病魔が阻止する。

 グラミー賞を10度受賞、79年には日本武道館公演を行った不滅のシンガー、リンダの功績をたたえたい。監督はロバート・エプスタインとジェフリー・フリードマン。

映画『リンダ・ロンシュタット サウンド・オブ・マイ・ヴォイス』

4月22日(金)より全国順次公開

出演:リンダ・ロンシュタット、ジャクソン・ブラウン、エミルー・ハリス、ドリー・パートン、ボニー・レイット、ライ・クーダー、ドン・ヘンリー、ピーター・アッシャー、デヴィッド・ゲフィン、キャメロン・クロウ

監督:ロブ・エプスタイン&ジェフリー・フリードマン
製作:ジェームズ・キーチ、ミッシェル・ファリノーラ 音楽:ジュリアン・レイモンド
撮影:イアン・コード、ナンシー・シュライバー 提供:ジェットリンク 配給:アンプラグド
2019年/アメリカ/93分/ビスタ/ステレオ 原題:Linda Ronstadt: The Sound of My Voice
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