観る者の「良心」に訴える重厚傑作。濡れ衣を着せられた少年たちの無罪を証明するため奮闘する刑事の姿を描く。『罪深き少年たち』

 視聴者の「憤怒」を呼び起こし、「正義感」に呼びかける。そうした作品が最近はとみに多くなった印象がある。そして、ほぼそれらは実話ベースである。一定の層が富と権力を持ち、のうのうと生きる陰で、多くの正直者がバカを見ている。21世紀も、もう4分の1が経ってしまうというのに、この実情はぜんぜん変わらない。

 この映画は1999年に起こった「スーパーマーケット強盗殺人事件」が下敷きとなっている。警察はただちに、近所に住む少年3名を犯人に決めた。少年たちは何が何やらわからないまま逮捕され、取り調べという名の拷問を受けて、囚人としての毎日を送ることになる。当時の事件を担当した者たちは軒並み出世し、こいつら大人にとっては「わざわい転じて福となす」、もしくは「一件落着」だ。検事も含めて、自分たちの管轄で強盗が起きようと、殺人が起きようと、そんなことよりも己が出世し、より大きな権力を握ることが大事なのである。

 が、少年たちはやるせない。「なんで俺が?」という思いは消えない。そこに現れるのが、「狂犬」との異名をとるファン・ジュンチョル刑事だ。彼の元に「真犯人」に関する情報が寄せられたのだ。が、警察自体にとってはその事件は「終わって」いて、いまさら真犯人を探す気はない。だって無実の少年たちに「罪」をでっちあげることで出世したのだから、それが公になったら都合が悪いじゃないか。そこでファン刑事の孤軍奮闘が始まる。ときに家族への(警察からの)身の危険を感じるなど、さまざまな妨害を受けつつ、真犯人を探し出す姿は「熱血」そのもの。一度は人生をあきらめた観のあった冤罪少年たちに、「生きて社会復帰すること」への意欲が増していくあたりの描写にも唸らされた。

 ほか、書きたいことはいろいろあるが、エンディングに向かってゆく疾走感はただごとではない。監督はチョン・ジヨンが務め、ファン刑事にはソル・ギョングが扮する。

映画『罪深き少年たち』

6月7日(金) シネマート新宿 ほか 全国ロードショー

監督:チョン・ジヨン
脚本:チョン・サンヒョプ
撮影:キム・ヒョンソク
音楽:シン・ミン
編集:キム・サンボム
出演:ソル・ギョング、ユ・ジュンサン、チン・ギョン、ホ・ソンテ、ヨム・ヘラン
2022年|韓国|カラー|シネスコ|5.1ch|124分|韓国語|日本語字幕:小西朋子|英題:THE BOYS|レイティング:PG12
配給:クロックワークス
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