「経済格差」、「親ガチャ」の先に、誰もが笑顔でいられる日常は決してやってこない。問題作『ニューオーダー』が、遂に日本公開

 喜びと悲劇のコントラストに、非情なまでに迫る一作だ。第77回ヴェネツィア国際映画祭で二部門に輝いたものの、いろんな映画祭で賛否両論が渦巻いたという。監督・脚本はメキシコの気鋭、ミシェル・フランコ。制作はまだコロナが猛威を振るう前だったとのことだが、これからの世の中がこの映画のようにならないという保証はどこにもない。

 主人公のマリアンは、何一つ不自由のない中で育てられたお嬢様。もちろん美貌にも恵まれていて、おしゃれだ。しかし親や兄よりは、物質ではなく人心に思いを寄せる一面も持っている。今日は彼女の結婚記念日。リッチな者だけが住むエリアにある豪邸には政財界の名士たちが集まり、おそらく他の庶民的なエリアから通勤しているであろうお手伝いさんはひたすら忙しい。

 いっぽう、通りの外では、あまりにもひどい貧富の差に庶民たちが憤り、抗議運動を始めていた。むろんそれはダメな政治に一因があるとはいえ、経済的に貧しい者に教育の機会が決して豊富に与えられることはないだろうから、彼らはどうして自分たちがこういう境遇にさせられているのか洞察するに至らず、目の前の敵をやっつけろとばかりに、嫉妬と、おそらく憂さ晴らしも兼ねて、金持ち居住区を標的とする。彼らをやっつけたところで、その財産が転がり込むわけでもないのに。

 マリアンの家にも暴徒が押し寄せるが、彼女は難を逃れ、ここから物語は加速する。一度として体験したことのなかった「現実」と向き合った彼女は……。出演はネイアン・ゴンザレス・ノルビンド、ディエゴ・ボネータ、モニカ・デル・カルメン他。6月4日より、渋谷シアター・イメージフォーラムほかにて順次公開。

映画『ニューオーダー』

6月4日(土)渋谷シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開

出演:ネイアン・ゴンザレス・ノルビンド、ディエゴ・ボネータ、モニカ・デル・カルメン

監督・脚本:ミシェル・フランコ
2020年/メキシコ・フランス/スペイン語/86分/シネマスコープ/5.1ch
字幕翻訳:平井かおり/原題:NUEVO ORDEN(英題:NEW ORDER)
配給:クロックワークス/PG12
(C)2020 Lo que algunos sonaron S.A. de C.V., Les Films d’Ici
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