カメラマンとしての初仕事が、嬰児の死体撮影だった……。あなたならどうする?

 なんの初仕事か。カメラマンとしての初仕事である。なるほど。

 では、何を撮るのか。赤ん坊の遺体である。しかもそれは父親からの依頼だった。

 えっ? なんですかそれは、ありえないでしょう、ちょっと考え直してくださいよ。本心では、そう言いたくなったかもしれない。だがそれでは仕事にならない。繰り返すが初仕事である。しっかり受けるのみだ。

 カメラマンと、妻と子を亡くした男の奇妙な、共同作業といえないこともないような共同作業が始まる。男は淡々と行動し、ぼそぼそとしゃべり、カメラマンは感情を棚の上におくようにして写真を撮り続ける。途中、男の視野に「生きている過去」が入り込んできて、結果、表情が俄然エモーショナルになる場面がある。このシーンこそ、映画の核なのではないかと、個人的には思った。この描写があるがゆえに自分は、この男の、ほか99%の冷たさ、そっけなさも受け入れることができる。そのくらい良いシーンだった。

 2020年に第33回東京国際映画祭でプレミア上映され、同年の第21回 TAMA NEW WAVEコンペティションではグランプリと男優賞を獲得。監督・主演を務めた小山駿助はこの作品で、さらなる注目を浴びることになるだろう。7月2日より、新宿K’s cinemaほか全国順次公開。

映画『初仕事』

7月2日より新宿K’s cinemaほか全国順次公開

<キャスト>
澤田栄一 小山駿助 橋口勇輝 武田知久 白石花子 竹田邦彦 細山萌子 中村安那

<スタッフ>
監督・脚本・絵コンテ・編集:小山駿助 撮影:高階匠 照明:迫田遼亮 録音:澤田栄一 メイク:細山萌子 衣裳:細山貴之 美術:田幸翔 配給協力:ミカタ・エンタテインメント
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