オアシスやマイブラ等を見出したロック史上に残る名伯楽、アランの軌跡に迫るドラマ映画『クリエイション・ストーリーズ ~世界の音楽シーンを塗り替えた男~』

 音楽家にスポットが当てられた映画は珍しくもなんともない。だがこの作品は、レコード会社のボス/レコード・プロデューサーが主役という点でいささか趣向が異なる。といってもマニアックなドキュメンタリーではなく、ドラマだ。俳優が、その人物を演じるのだ。しかもそのモデルとなった男=アラン・マッギーは、今なお生きていて、創造をやめていない。つまり、“伝説的な人物がやり済ませたこと”を今の目線で映画化したわけではない。そう考えると、当映画の制作がどれほど異例であったかがわかる。

 製作総指揮は、名曲満載だったヒット映画『トレインスポッティング』でも知られるダニー・ボイル。ロックの醍醐味を熟知するダニーの参画が、映画の質を保証する。

 英国のグラスゴーに生まれ、少年の頃からロックに熱中。当然ながら親はいい顔をしなかったが(当時、ロックは不良の音楽だったので)、セックス・ピストルズに大感激して、自らのバンド活動も本格化。ここにアランは決して引き返せないロックの大海に投身した。ロンドンに移って文字通りセックス・ドラッグ&ロックンロールの日々を送りつつ、81年にレーベル“クリエイション”を共同で設立すると、やがて、ジーザス&メリーチェインが一大ブレイク。アランはすさまじい嗅覚でプライマル・スクリーム(ボビー・ギレスピーとアランは昔バンドを組んでいた)、マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン、オアシスらの潜在能力をもいち早く捉え、結果的に彼らの音楽を広める一翼を担う。

 この(大人になってからの)アラン役に扮するユエン・ブレムナーの、渋みと狂気が共存する演技は見事。ガラガラの客席で演奏する無名時代のオアシスにたまたま接してひとり興奮し、彼らの音楽をぜひ広く紹介したいと奔走する姿に、ぼくは「音楽ファンの原点」を見る。ちょっと人情噺的な、親子関係でホロッとさせられる場所もある。監督ニック・モラン、10月21日より新宿シネマカリテほかにて全国公開。

映画『クリエイション・ストーリーズ ~世界の音楽シーンを塗り替えた男~』

10月21日(金)より新宿シネマカリテほか全国ロードショー

配給: ポニーキャニオン
2021年/イギリス/英語/110分/原題:Creation Storie
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