名匠ヴァルダの、再評価高まる80年代作品が本人監修のDCP素材で劇場公開

 2019年に90歳で他界した映画作家アニエス・ヴァルダ。いまなおラブコールがやまない彼女が1985年に監督・脚本・共同編集として名を刻む重要作『冬の旅』の、久々の日本における劇場上映が実現する。

 冒頭から、いきなり冷え冷えしたショッキングなシーンが目に飛び込んでくる。場所はフランスの片田舎、季節は冬。畑の側溝でひとりの少女が凍死体で発見された。なぜ彼女はこんな場所で死んだのか、そこに至るまでには何があったのか。路上で出会った人々に話を聞いているうちに、うかびあがってきた真実、そして驚き。

 途中、レゲエやニューウェイヴ調の音楽が流れて耳を引き付けるが、全体のトーンはいたって静謐だ。第42回ヴェネツィア国際映画祭では金獅子賞に輝き、主演のサンドリーヌ・ボネールはセザール賞最優秀主演女優賞を獲得。「フランスでは、当時のアートシアター映画としては異例の 100万人を超える動員を記録した」との記述もある。しかし日本で公開されたのは製作から約6年後と遅れ、次に上映されたのは今年3月に東京・国立映画アーカイブで行われた特集上映「フランス映画を作った女性監督たち -放浪と抵抗の軌跡」の中で、だった。

 今回の劇場上映は、その絶大な反響(早々にソールドアウトとなった)を受けてのものであり、この映画やヴァルダに対するさらなる評価につながること間違いなしの貴重な機会だ。2014年にヴァルダと撮影監督のパトリック・ブロシェによる監修で2K修復されたDCP素材による劇場公開。

映画『冬の旅』

11月5日(土)より、シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー

監督・脚本・共同編集:アニエス・ヴァルダ 
撮影:パトリック・ブロシェ 
音楽:ジョアンナ・ブルゾヴィッチ
出演:サンドリーヌ・ボネール、マーシャ・メリル、ステファン・フレイス、ヨランド・モロー
1985年/フランス/ヨーロッパ・ビスタ/カラー/105分 
原題:SANS TOIT NI LOI (英題:Vagabond)
配給:ザジフィルムズ
(c) 1985 Cine-Tamaris / films A2 

公式サイト
http://www.zaziefilms.com/fuyunotabi/