観る者の想像力を花開かせる、真夏の浅草、路地裏の物語『ゆめのまにまに』

 あわただしい日常を忘れさせてくれる作品だ。セリフの“間”も快い。10言うところをあえて7ぐらいにとどめ、残りを観る者の想像にゆだねるような感じだ。

 季節は夏。舞台となっているのは、浅草六区の古物店「東京蛍堂」。主に大正時代のグッズを取り扱っている。アルバイトのマコト(こだまたいち)は気ままに毎日を過ごしているようでいて、実は滅法気が利く。子供からも慕われる、なかなかの愛されキャラだ。そこにやってきたのは真悠子(千國めぐみ)という女性。店主(村上淳)に会いたいのか足しげく通ってくるのだが、あいにく店主は不在がち。とくに何を買うわけでもなくふらりと立ち寄っては帰っていく、その表情にはなんともいえない影があり、それがマコトに強い印象を残すのだ。

 芸能プロダクション「ディケイド」の30周年記念作品。意表を突きまくる展開というものもないし、最新機器が活用されることもない。血もほとばしらないし絶叫も生まれない。だがこのなにげなさは、劇中に登場する「棒に刺したきゅうりの漬物(一本漬け)」のおいしさそのものではないか。いとおしい瞬間を切り取って、しっかりと見せていくのだ。

 監督・脚本の張元香織はこれが長編2作目、『あのこは貴族』などで助監督を務めた経験も持つ。11月12日より東京・ユーロスペース他、全国順次公開。

映画『ゆめのまにまに』 

11月12日(土)より東京・ユーロスペース他、全国順次公開

<キャスト>
こだまたいち 千國めぐみ 遊屋慎太郎 野口千優 澁谷麻美 北澤浩志郎 岩谷健司 内藤正記 松浦祐也 和田光沙 玉りんど 藤井千帆 岡部ひろき 浦山佳樹 泉拓磨 高橋綾沙 藤入鹿 原風音 三浦誠己 山本浩司 中村優子/村上淳

<スタッフ>
監督・脚本:張元香織 主題歌:酔蕩天使「サンローゼ」(HILLS RECORDS) 企画:佐伯真吾 撮影監督:山崎裕 音楽:磯田健一郎 録音:森英司 美術:櫻井啓介 編集:菊井貴繁 サウンドデザイン:弥栄裕樹 ヘアメイク:寺沢ルミ 助監督:二宮崇 製作担当:金子堅太郎 スチール:横山創大 特別協力:浅草・東京蛍堂 製作:ディケイド 配給:スールキートス 宣伝:フリーストーン
101分/16:9(1.78:1)/5.1ch/2K/カラー/2022
文化庁「ARTS for the future!」補助対象事業
(C)2022ディケイド

公式サイト
https://yumenomanimani.com/