骨髄移植によって新たな生命を得た俳優が、自らの経験を基に綴った意義深い一作『みんな生きている ~二つ目の誕生日~』

 急性骨髄性白血病で余命2年を宣告されながらも、骨髄移植によって新たな生命を得た俳優・樋口大悟。自らの体験を基に描いた映画『みんな生きている ~二つ目の誕生日~』が、2月4日から新宿K’s cinemaほか全国順次公開される。昨年12月に新潟県糸魚川市で先行公開され、話題を集めた一作だ。樋口は自ら企画・原案するだけではなく、主演もしている。

 空手の全国大会を狙える実力者だった青年・大介が、突然稽古中に倒れ、白血病を宣告され、過酷な治療を体験しつつ、骨髄移植を経て、やがて「二つ目の誕生日」を迎えるまでがテンポよく描かれる。樋口は自分の人生をもう一度生き直しているような気持で、この作品に取り組んだのではなかろうか。

 途中からは骨髄移植提供側(ドナー)の家族にもスポットが当たる。全身麻酔をかけられる、骨に針を刺す、仕事や育児を休まなければならない、無償、こういったことを事前に理解しつつ、それでも見ず知らずの人に骨髄移植できるのか? (ドナーも患者も、原則として相手について知ることができない。ただし手紙のやりとりは仲介者を通じてできる)。

 いつ誰が、どんな病にかかるかわからないのは、世界中の皆も同じこと。そのなかで、あなたは、すでに病に苦しんでいるひとに対してどんな行動をとれますか? と問いかけられているような気分だ。

 2時間近い長篇だが、いくつものチャプターに分かれている。骨髄移植とはなにか(血液を作る造血細胞を他人のものと入れ替える治療法。白血球の型が合わなければ移植はできない)、先に触れた「互いを知ることができない」患者とドナーの関係など、この映画を通じて初めて知ることがたくさんあった。日本骨髄バンクが初期段階から監修し、実際の医師や看護師の指導のもとに撮影されたということで、勉強・啓蒙的なところもあり、こうした「ためになる」映画は個人的にも喜ばしい。

 葛藤をストレートに出す粗削りな患者・大介と、穏やかで大らかですべてを包み込むようなドナー・美智子(松本若菜)の対比も印象深い。

映画『みんな生きている ~二つ目の誕生日~』

2月4日(土)より新宿K’s cinemaほか全国順次公開
配給:ギグリーボックス
(C)2022「みんな生きている ~二つ目の誕生日~」製作プロジェクト

公式サイト
https://www.min-iki.com/