俺を誘拐犯人にしたのは誰だ？「バディもの」の枠を超えたスリル満点の一作『ジェントルマン』

　ガイ・リッチー監督の2011年公開映画『ジェントルメン』とは別作品。あちらが複数形なら、こちらは単数形で迫る。主役のチ・ヒョンスに扮するのは、映画『神と共に』シリーズ（韓国で2700万人を動員）や、ドラマ『キングダム』シリーズでも知られるチュ・ジフン。興信所の超辣腕社長としてダンディな毎日を過ごしていたが、ひょんなことから誘拐事件の犯人とみなされ、逮捕。そのぬれぎぬを晴らすために検事になりすまし、「内部」へと入り込む。ときくと、かなり飛躍したストーリーに思われるかもしれないが、安定感のあるストーリー作りや、コミカルな時にはコミカルで、格調高い時はしっかりと格調高いジフンの演技によって、実に説得力のある「検事化」となっている。

　チェ・ソンウン扮する女性検事のキム・ファジンとの巧みなコンビネーションも大きな見ものだが、彼女は大変な切れ者キャラ。ヒョンスが「ニセ検事」であることを、わからないほうがおかしい。しかし彼女は切れ者なので決して野暮なふるまいはしない。「先の先の、その斜め上」を見ているかのような言動を、じつにクールにする。そういう意味では彼女はジェントルウーマンである。ほか、驚きのタイミングで挿入されるフランク・シナトラ「マイ・ウェイ」、超スローモーションのシーン、パク・ソンウンの怪演、「誘拐事件」と密接な関係のある犬の登場箇所など、見逃せない瞬間が続出。いろんな名作映画のオマージュとおぼしきシーンもいくつかあり、私はラスト・シーンのアングルやライティングに破顔一笑した。監督・脚本キム・ギョンウォン。