思い出すだけでもスリリングな一作だった。国内興行収入1位、16の国と地域でヒット(うち中国・香港・ベトナム・マレーシア・ブルネイ・マカオ・フィリピンではタイ映画史上歴代興収1位)を記録した『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』、それをリメイクしてしまったのが7月11日から公開される『BAD GENIUS/バッド・ジーニアス』なのだ。

今度の舞台はアメリカ。主人公はアジア系の少女、リンだ。コインランドリーを営む父親との二人暮らしは裕福ではなかったが、とにかく成績優秀で、高校2年への進級時、一流大学入学者続出の名門高校から奨学金つきの特待生として迎えられた。父は当然ながら教育熱心で、多くはないお金を娘に注ぎ込んでいる。「マイノリティ(白人以外)がアメリカの第一線でやっていくためには、とてつもなく抜きんでたものが必要である」ことを人生経験上、知っているのであろう。
リンはもちろん英語ネイティヴで、しかも楽器演奏にも堪能。ニューヨークのジュリアード音楽院でクラシックを学びたいという意思もある。が、父は必ずしもそれに賛成せず、より固い職業を望んでいるようだ。いちはやく学内でリンと親しくなったのは、落第もやむなしだったグレース。リンはとある方法で「彼女を成績優秀に見えるような措置を施し」、それがグレースに認められ、やがてグレースの周りの仲間たちも「ねえ、俺たちの成績もよくしてくれよ」とばかりにリンのアイデアに頼る。しかもその仲間の父親には弁護士であるとともにジュリアード音楽院の理事を務める権力者もいるのだ。
というのが大体前半6分の1ほどだが、とにかくテンポよく、流れるように展開が続く。コネがモノを言うこと、格差が現実であることをしっかり描きながらも、決してどの肌の色の人物も批判的にならずに描かれている。リンは成績優秀なだけではなく、人を見る目も確かだったこともしっかりとわかる。タイ版でクライマックスとなっていたお手洗いのシーンが今回どうなっているのかも、思いっきり期待して見てほしいと思う。主演はカリーナ・リャン、監督・脚本はJ・C・リー、共同脚本はジュリアス・オナー。
映画『BAD GENIUS/バッド・ジーニアス』
7月11日(金) 新宿バルト9 他 全国ロードショー
監督:J・C・リー 脚本:J・C・リー ジュリアス・オナー
出演:カリーナ・リャン ジャバリ・バンクス AND ベネディクト・ウォン
配給:ギャガ
シネマスコープ/5.1chデジタル/上映時間:97分/字幕翻訳:中沢志乃
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