“トイレを舞台にした、今までで一番格好いい映画”との声も高い話題作がドイツから上陸。『ホーリー・トイレット』

 「うわー、痛そう」。そんなシーンが幾度となく現れる。体内のいろんなところから出るいろんな液体が勢いよく画面の中で飛び交う。見る人を選ぶ作品といっていいだろう。が、物語は実にストレート。「ずるいことをするやつ、不器用でも誠実に物事にあたろうとする奴」を、「おてんとさん」はちゃんと見ているよ、だから、偉くなくとも正しく生きようではないか。そんなメッセージが込められていると感じた。

 建築家の男、フランクが主人公。なぜか仮設トイレの中に閉じ込められていて、腕には鉄筋が刺さっている。しばらく気を失っていたので、どうして自分がこうなっているのかがわからない。遠くから聞こえてくるのは、ホルストという名の市長の、やけに張り切った声。その利潤にあやかりたい者たちが彼をあがめたてる。ホルストは有識者からのいろんな反対意見を力ずくで押しのけて自らの利益のためにリゾートホテルの起工を始め、フランクの閉じ込められている仮設トイレをはじめとするモロモロをダイナマイトで爆破しようとしていた。

 癒着、忖度といった言葉が似合いそうな物語は山本薩夫の時代から存在する。が、そこに、「トイレット」をぶつけるとは。ホラー的なところもあり、コメディ的なところもあり、いささかのスカトロ味もあり。ドイツ語の響きの与える「硬さ」も、この刺激的な映画の隠し味になっている。監督は、これが長篇デビュー作となるルーカス・リンカー。3月3日からヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開。

映画『ホーリー・トイレット』

3月3日(金)ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開

監督・脚本:ルーカス・リンカー
出演:トーマス・ニーハウス、ギデオン・ブルクハルト
2021年/ドイツ映画/ドイツ語/90分/ビスタ/5.1ch/原題:Ach du Scheisse!/英題:Holy Shit! /日本語字幕:伊勢田京子/提供:ニューセレクト/配給:アルバトロス・フィルム/PG-12/アルバロゴ
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公式サイト
https://holy-toilet.com/