カトリーヌ・ドヌーヴも称賛した、観客総震撼間違いなしのスリラー映画『理想郷』

 日本のどこかで今も起きていそうな話だが、映画の基になっているのは1997年から数年間、スペイン・ガリシア州の村民とオランダ人夫婦の間で実際に起きた軋轢だ。映画ではそこが「フランス人夫婦」の話になっている。

 ガリシア州の、ある村に、フランス人の夫婦が越してきた。緑豊かな山岳地帯で、オーガニックな農業を実践しようとしたのであるが、当然ながら、その場所には村民がいて、コミュニティがある。もちろんフランス人は「フランス人野郎」を言われてもどうにか耐えていたし、新たな住民として謙虚に暮らしていた、はずなのだが、村民は決して自分たちがスローライフの者であるとは思っていなかったし、純朴でもなかったし、それなりにすれていたし、鬱積していたし、「力」が欲しかった。とある事柄から風向きが変わり、フランス人の、とくに夫は、「村民の敵」「和を乱す新参者」となる。

 「いい大人が、どうしてそこまで」と見下さずにはいられないほど、下劣で、幼稚かつこなまずるい「いやがらせ」の数々。97年の事件は最悪の結末を迎えたが、この映画はどうなのか、ぜひご覧いただけたらと思う。監督はロドリゴ・ソロゴイェン(脚本はイザベル・ペーニャと共同)、出演はドゥニ・メノーシェ、マリナ・フォイス他。第35回東京国際映画祭にて主要3部門受賞。『理想郷』という邦題も、皮肉が利いていて素晴らしい。

映画『理想郷』

11月3日(金・祝)よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、シネマート新宿ほか全国順次公開

出演:ドゥニ・メノーシェ、マリナ・フォイス、ルイス・サエラ、ディエゴ・アニード、マリー・コロン
監督:ロドリゴ・ソロゴイェン 脚本:イザベル・ペーニャ、ロドリゴ・ソロゴイェン
撮影監督:アレハンドロ・デ・パブロ 
2022/スペイン・フランス/スペイン語・フランス語・ガリシア語/138分/カラー/シネスコ/5.1ch/原題:AS BESTAS/英題:THE BESTAS/字幕:渡邉一治
配給:アンプラグド 後援:駐日スペイン大使館、在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ
(C) Arcadia Motion Pictures, S.L., Caballo Films, S.L., Cronos Entertainment, A.I.E,Le pacte S.A.S.

公式サイト
https://unpfilm.com/risokyo/