重いものをつきつける作品だ。と同時に、観る者の年齢がどうなのかで、感じ方も変わってくる作品だろう。私はやはりどうしても、17歳の愛娘を同級生に殺された両親の側から見てしまう。
……のだが、これは単に「愛娘を同級生に殺された」話ではないのである。そもそも殺人というのは、相手側にその人を殺したいという気持ちがなければ成り立たない。捕まって、長期間服役して、模範囚をやって、めでたく社会に戻れたとしても、「殺人犯である事実」を知っている人が周りからいなくなるわけではないし、ようするに、殺人をし、殺人犯として残りの人生を過ごすのはものすごくめんどくさい。が、ある程度そのめんどくささを背負う覚悟をしたからこそ、この加害者は、同級生を刺し殺すことに及んだ。強い恨みが、彼女を人殺しへと進めたのだ。
が、被害者の両親にとっては、そのあたりがわからない。ふたりにとっては、いつもニコニコして、親のいうことをよくきいている、ほがらかな娘なのだ。そのほがらかな娘を、あんたはどうして殺したのか、もう娑婆には、つまり我々のいるところには二度と戻ってくるな、と、とくに被害者の父親は怒りをまき散らす。
が、この殺人には理由がある。その理由が、映画の中で、実に小出しに描かれ、観る者を粘っこくひきつける。そこに監督と編集を手がけたアンシュル・チョウハンの巧みさをみた。とにかく最後まで気が抜けない。夫婦(実は娘が殺されてから離婚しているのだが)役には尚玄とMEGUMIが扮する。
映画『赦し』
3月18日(土)よりユーロスペースほか全国順次公開
出演:尚玄 MEGUMI 松浦りょう 生津徹 成海花音 藤森慎吾 真矢ミキ
監督・編集:アンシュル・チョウハン
プロデューサー:山下貴裕 茂木美那 アンシュル・チョウハン エグゼクティブ・プロデューサー:サイモン・クロウ ランカスター文江 アソシエイト・プロデューサー:前田けゑ 澤繁実 岡田真一 木川良弘 脚本:ランド・コルター 撮影:ピーター・モエン・ジェンセン 音楽:香田悠真 助成:文化庁 製作プロダクション:KOWATANDA FILMS、YAMAN FILMS 配給:彩プロ
2022年/日本/日本語/カラー/2:1/5.1ch/98分/原題(英語題):DECEMBER
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