注目の女優、ミハリナがチェコスロバキア最後の女性死刑囚、オルガに扮した話題作、『私、オルガ・ヘプナロヴァー』

 2016年ベルリン国際映画祭パノラマ部門のオープニング作品を飾った一作(監督:トマーシュ・ヴァインレプ、ペトル・カズダ)が遂に日本に上陸する。1973年にチェコ・プラハで実際に起きた無差別殺人の犯人、オルガ・ヘプナロヴァーをモデルにした一作だ。非常に大変な役柄だったのではと思うが、『ゆれる人魚』や『マチルダ 禁断の恋』などで知られるミハリナ・オルシャンニスカがオルガに扮し、チェコ・アカデミー賞主演女優賞を獲得した。

 無差別殺人事件、およびオルガのマインドについてはあまりにもおぞましいので各自お調べいただきたいが、彼女が持つ「恨み」のエネルギーはすごい。この世に生きることのつまらなさを全身で表現するように動き、ひっきりなしに飲酒し、タバコを吸い、だけど何事もなく人生を閉じるつもりは毛頭なさそうなオルガ。誰かを巻き添えにしないと溜飲の下がらないオルガ。同性との情事もあるにはあるが、それは一種の憂さ晴らしで、やったところで虚しさが増すだけだ。

 犯行に及ぶ前、オルガは新聞社に手紙を送っている。犯罪者への同情やあわれみをはねつけるような異様な文面。異様すぎて逆にリアリティに欠けるかもしれない、しかしオルガの中でそれはリアルだった。モノクロ画面が放つ重厚さ、劇中に一切、音楽が登場しないことで生まれる渇き。頭を抱えながら、では、自分が明日のオルガになる可能性はまったくもって本当にゼロなのか、と自問自答すると、いや、果たしてそういいきれるかな、と堂々巡りに入りそうになってしまう。

映画『私、オルガ・ヘプナロヴァー』

4月29日(土)より、シアターイメージフォーラムほか全国順次公開

監督・脚本:トマーシュ・ヴァインレプ、ペトル・カズダ
原作:ロマン・ツィーレク
撮影:アダム・スィコラ
編集:ヴォイチェフ・フリッチ
美術:アレクサンドル・コザーク
衣装:アネタ・グルニャーコヴァー

出演者: ミハリナ・オルシャニスカ、マリカ・ソポスカー、クラーラ・メリーシコヴァー、マルチン・ペフラート、マルタ・マズレク

【2016年/チェコ・ポーランド・スロバキア・フランス/105分/B&W/5.1ch/1:1.85/DCP/原題:Ja, Olga Hepnarova】
日本語字幕:上條葉月
字幕監修:ペトル・ホリー
提供:クレプスキュール フィルム、シネマ・サクセション
配給:クレプスキュール フィルム

公式サイト
http://olga.crepuscule-films.com/