「ドキュフィクション」、であるという。ドキュメンタリーとフィクションをあわせた造語であるのだろうなというぐらいは想像できたが、どんな内容をそう呼ぶのか、観始めた当初はわからなかった。が、観終えた時、実に腑に落ちた。「罪」をめぐる、なんともいえないやるせなさと共に。
本作は、れっきとした劇映画だ。受刑者の採用を支援している就職情報誌の活動にヒントを得て、制作されたという。日本の刑務所を満期で出所した者が5年以内に再犯し、再び入所する確率は約50パーセントなのだそうだ。つまり半数の者が、また罪をおかしてしまう。しかも、再入所者の7割が無職だったときく。前科者を雇う雇用者は限られているだろうし、よしんばそこで職を得たとしても、どこに「偏見の目」がひそんでいるかわからない。誰が口外するかもわからない。針のむしろのうえで、粛々と働き、毎日をどうにか生きようとしている。が、被害者側にとって、彼らは永遠に「元」のとれることのない罪人であり、殺されたり傷つけられた生命・精神が元の形で戻ってこない限り、果てしない怒りの対象であり続ける。
ひき逃げ、暴力、レイプ、放火、薬物常習、その他、いろいろなことで刑務所に入り、刑期を終えた者たちが、社会に戻り、働かなきゃと動き出す。確かにそこに待ち受けているのは新しい世界、だがそれは「過去との闘い」が執拗に求められる場でもある。
後半、元受刑者たちが演劇をおこなうのだが(就職情報誌のスタッフが、アメリカの、演劇による心理療法・ドラマセラピーに着想を得たという設定)、それを終えた後の元受刑者たちと観客のやり取りも大きな見ものだ。監督・プロデューサーは舩橋淳。あえて台本は用意せず、現場で俳優と演技を煮詰めていったという。それも作品の生々しさにつながったに違いない。
映画『過去負う者』
10月7日より、ポレポレ東中野にてロードショー
撮影・録音・編集・監督:船橋淳 プロデューサー:船橋淳、植山英美 後援:法務省 配給・宣伝:株式会社BIG RIVER FILMS ワールドセールス:ARTicle Films