兵士→囚人→ギャンブラー。“復讐と贖罪”を、スコセッシとシュレイダーの名コンビが描く『カード・カウンター』

 あの名作『タクシードライバー』(1976年)で知られるマーティン・スコセッシ(製作総指揮)とポール・シュレイダー(監督・脚本)のコンビがよみがえった。主人公のギャンブラー、ウィリアム・テルを演じるのは名優オスカー・アイザック。すでに海外の主要映画賞でも絶賛され、ヴァニティ・フェアでは「オスカー・アイザックのキャリア史上最高のパフォーマンス」、ニューヨーカーでは「ポール・シュレイダー監督による米国の腐敗に対する猛烈なビジョン」と評された。しかも、オバマ元大統領が年間ベスト14本に選んだという。

 「オバマ氏の音楽や映画に対するセンスの良さはいろんなところで知られているし、これも満足させてくれる作品なのだろう」、そして「自分はギャンブルのことがいっさいわからない。最後まで楽しめるだろうか?」という気持ちが交錯したまま、観始めたのだが、結果としてはストーリー展開の面白さにしっかり引き込まれた。

 主人公のウィリアムはイラク戦争に出征し、8年間の刑務所生活を経て、独学でカードゲームの世界に入り込んだ。ギャンブラーとなる過程、そこからの歩み、そして大一番のポーカー世界大会へ臨んでいくところが、いずれもしっかりと、濃く描かれる。描きが丁寧だから、見るものが置いていかれることは、おそらくない。ミステリアスなギャンブラーであっても、やはり人の子であること。不安と隣り合わせであること……冷徹に勝負に挑む姿と、恋をしたり、復讐や贖罪のために動く(この“復讐や贖罪”も、この映画のメインテーマである)エモーショナルな姿の対比が、内容に深みを与える。

映画『カード・カウンター』

6月16日(金)より ヒューマントラストシネマ渋谷、シネマート新宿ほかにて全国順次公開

監督・脚本:ポール・シュレイダー
製作総指揮:マーティン・スコセッシほか
プロデューサー:ブラクストン・ポープ、ローレン・マン、デビッド M. ウルフ
撮影:アレクサンダー・ディナン
音楽:ロバート・レヴォン・ビーン
美術:アシュレイ・フェントン
編集:ベンジャミン・ロドリゲス・ジュニア
2021年/アメリカ・イギリス・中国・スウェーデン/英語/112分/カラー/ビスタ/5.1ch
原題:The Card Counter/R15/日本語字幕:岩辺いずみ/字幕監修:木原直哉
配給:トランスフォーマー
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公式サイト
https://transformer.co.jp/m/cardcounter/#