「群青いろ」17年ぶりの劇場公開作は、かつてないラブストーリー『雨降って、ジ・エンド。』

 脚本家・監督の髙橋泉と、俳優・監督の廣末哲万からなる映像ユニット「群青いろ」による、17年ぶりの劇場公開作品『雨降って、ジ・エンド。』を、2月10日から東京・ポレポレ東中野で観ることができる。私は先日、彼らの2012年作品『あたしは世界なんかじゃないから』の上映イベントに行き、時代を先取りした映画の内容と、トークコーナーにおける両氏の発言に胸のすくような気持になったが、この最新作でも、「この先どうなるんだろう?」的なワクワク感と、現実のにがさ、「ああ、なるほど、そういうわけだったのか」とこちらの腑に落ちるところの配合、もろもろが実に引き締まって表現されており、じっくりとした余韻にも浸ることができた。

 主人公の日和(古川琴音)はイヤミっぽい上司に耐えながらどうにか派遣バイトをこなしている。目標はフォトグラファーだが、部屋にはアルヴァ・アアルトに関する分厚い本も置いてあるので、建築やデザインに関する関心もあるようだ。あるとき、顔にピエロ風のメイクをした中年男の雨森(廣末哲万)にカメラを向けたところ、その写真がSNSでバズり、以来、雨森に接近してゆく。半ば「自分をバズらせるためのキャラクター」と捉えていたところもあろうし、最初のほうの、彼の独特の人間性に関する彼女の態度は「人間としての共感」というよりも「珍獣への興味」に近かったのではないか、とも私は思ったが、とにもかくにも、歳月と共に日和の心模様はどんどん変化し、それは彼女自身の精神的成長にもつながっているのが画面越しに手に取るようにわかる。途中、雨森の過去や嗜好が綴られる箇所から、物語はさらに深みを増してゆく。

 本作では、髙橋が監督と脚本を担当。ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2022のワールドプレミア(特別上映)、なら国際映画祭2022(特別招待作品)、第15回下北沢映画祭(「群青いろ」新作特集)での上映を経て、今回の公開に至った。

映画『雨降って、ジ・エンド。』

2月10日(土)より、ポレポレ東中野ほか全国順次公開

出演:古川琴音、廣末哲万、大下美歩、新恵みどり、若林拓也
監督・脚本:髙橋泉 音楽:平本正宏 撮影:彦坂みさき 照明:金子秀樹 録音:皆川慶介 美術:泉佳央里 衣裳:石原徳子 ヘアメイク:南辻光宏 助監督:菊地健雄 プロデューサー:齋藤寛朗 企画:群青いろ 制作:カズモ 配給:カズモ 宣伝:MAP+山口慎平
2020/日本/カラー/84分/5.1ch/ビスタサイズ

公式サイト
https://amefuttetheend.com/