このピュアな宇宙愛を全身全霊で受け止めろ! 中国で150万人を動員した話題作『宇宙探索編集部』

 かまやつひろしは、かつて「ゴロワーズを吸ったことはあるかい」という曲の中で、“きみは何かにこったりしたことがあるかい”と歌った。この映画『宇宙探索編集部』の主人公であるタンはとにかく宇宙に凝っていて、宇宙を愛し、宇宙人に会いたくて、そのために毎日を生きているといっても過言ではない。ここまでひとつのことにまっすぐ、長期間にわたって打ち込めるのは、まぎれもなく一つの才能だ。もちろん、あまりの宇宙好きに、まわりは「引いている」ところもあるのだが、物語が進むうちに、その「引いている」ひとたちが、どうにも野暮ったく思えてくる。そのくらいタンの宇宙愛は澄んでいる。

 まぎれもなく超濃厚なオタクであるタンだが、そのいっぽうで、彼はUFO雑誌[宇宙探索]の編集長を長く務める、いわば「その道の先生」でもある。1990年代初頭に起こった宇宙ブームの頃にはテレビの取材も受け、自説を雄弁に展開していた。が、それはあくまでも昔のこと。[宇宙探索]も今では廃刊の危機にあるものの、タンの心はいつも宇宙にときめいていて、「中国西部の村に宇宙人が現れた」という情報をつかむやいなや、西へと向かう。

 とにかく熱い男がタンなのだが、理解者は少ないながらもしっかりいて、以降はロードムービー、友情物語、SFが入り混じったような展開となる。登場人物の中では、頭に両手鍋のようなものをかぶった青年が強烈な存在感を放つ。

 平遥国際映画祭、北京国際映画祭、香港国際映画祭、大阪アジアン映画祭などで話題を集め、2023年4月からの中国公開では約150万人を動員したと伝えられる。冷笑が幅を利かせるこの世の中で、「何かに熱くなることは、こんなにかっこいい」と伝えてくれる、実に輝かしい一作だ。監督・共同脚本はコン・ダーシャン、タンにはヤン・ハオユー、青年にはワン・イートン(共同脚本も)が扮する。

映画『宇宙探索編集部』

10月13日(金)より新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開

監督:コン・ダーシャン(孔大山)
出演:ヤン・ハオユー(楊皓宇)、アイ・リーヤー(艾麗婭)、ワン・イートン(王一通)、ジャン・チーミン(蒋奇明)、ション・チェンチェン(盛晨晨)
字幕:磯尚太郎
字幕協力:大阪大学外国語学部 古川裕
配給:ムヴィオラ
原題:宇宙探索編輯部|英語題:Journey to the West|2021|中国映画|118分|1.78:1|5.1ch

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